立夏

『渡り鳥』
旅をする者
とどまる者──
冬が来て、どこもかしこも寒さに備える。
優しい人も、お顔が怖いおこりんぼも
北風にはどうも勝てない気がするぞ。
強がりな氷柱ちゃんだって
かわいいコートを選ぶんだもの!
お山が寒くなれば
クマはエサを集めて冬眠の支度。
お空の上も寒いから
鳥の群れは暖かな南へ。
たまーにリッカは
気分であちこちぶらぶらしているから
落ち着きがない自由人と思われがち。
糸の切れた凧ともいう。
ゆっくり腰を落ち着けることを
ママのおなかに置いてきたまま生まれ、
赤ちゃんの頃から
音が鳴るおもちゃへ、
お姉ちゃんたちへ、
おっぱいへと!
なかなか人に見せなかったのは
天使のような寝顔。
きっと、人の気配がしたら
遊んでくれる人が来た、それだけしか頭にない子だ。
窓の外を猫が歩いても
鳥が歌っても
お友達だ、ってかんじ。
やったーとか
言葉も知らないうちからテンションだけは今と変わらずに
はいはいするあーちゃんを
そこだ、いいぞ、いっけー!
なんかリッカも赤ちゃんの頃からずっとそうだった気がするんだよ!
そう言って
走っていくかわいいあーちゃんの油断を狙い抱きしめるの。
だから、リッカはいつか
ふらっと出て行って
どこか遠い国から
いつまでも変わらぬ調子の絵葉書が届く
そんな感じの大人になるよって
お姉ちゃんたちはもうあきらめた調子で言うのでした。
見たこともない建物がある国の
知らない歌を歌う鳥がやってくる街。
季節が変わる頃に
きっと子供の頃に明るく過ごした家の近くから
新しい歌を覚えるリッカのところに顔を見せる
長い距離を渡る
昔なじみのお友達。
それでも忘れないで
たまには帰ってきなさいとか
早くも注意されている
お空の鳥を遠く眺めて、追いかけていた子供の
今日この頃の様子は──
なんと、だんだん料理ができるようなできないような
でもどちらかといったらできないほうだけど
まったくできないというわけでもなくなってきて
なんとか自分の好きなものをおなかいっぱい用意できそうな
希望は見えてきた!
おなべに入ってる大きめゴロゴロサイズのお野菜は
リッカが切って鍋に入れたやつ。
毎日お鍋なら──
クマみたいにたくさん食べて冬を越せそうで
気まぐれでぶらぶらしないで家であったまるのが一番好きになって
そしたら、ここで冬眠できそう!
寒さから逃れて飛んでいく女の子を
ただ、あったかいというだけでとどめておくパワー。
おなべでじゅうぶんかな?
まだ足りないかな──
果たしてリッカはこの冬を越せそう?
リッカをいちばん暖かくしてくれる人だけが
答えを教えてくれるって知ってるんだよ!