吹雪

系統樹
葉の落ちた枝は
広がり、分かれていく
本来の姿を露にしている。
これは多くの日光を受け止められるよう
葉が茂る面積を広げる意味合いがあります。
こうして枝分かれをする形状を見て
私は生命の進化を思う。
霙姉は魔法陣や占いに関係するらしい話をして通り過ぎる。
夕凪姉は昨日に引き続いて飛び跳ねて
届くかどうか試しているという状況です。
では、私の考えたことの話です。
最初の生命の誕生については多くの説がありますが
原始の海で発生し、現在よりも苛酷な自然環境において
豊富なエネルギーを得て
自己を複製する能力を得た説が有力であるとされる。
やがて長い時間をかけて複雑な形態へと移行していくのですが
増殖の過程で現在の自己と異なる部分を持つようになるのは
複製時のエラーが主な原因だという。
元の形態と異なる形になる、とはつまり
多くの場合はそれまでの環境に適応するのが難しくなることを意味しています。
しかし稀に、偶然というただ一つの原因によって
以前の形態よりも適応しやすくなる場合がある。
あるいは、それまでの環境を捨てて
新たに適応する場所を見つけることができるようになる。
複雑化する傾向がなければエラーは発生しにくくなり
エラーがなくては適応する環境を広げることはできない。
幸い、今も昔も
自然界では分子が位置を変え、組成を変え
エネルギーは豊富にある状況が続いている。
過去の地球は大気がなかったために地表に注ぐ太陽光のエネルギーが強かったとされるが
現在の大気はそれまでとは別に多くの影響を生命に与えていると見られる。
それは気温を保持することで生まれる季節の変化であったり
また、地球の火山活動、安定した軌道をたどる月の重力などは
おそらく幾度も影響力を変えながら、古代の地球表面とは別の環境を形成している。
ということはつまり
人間に分類される知恵を持つとされる生き物が
全ての生命で最も優秀であるか、そうでないかの意見に関わらず
これからも形を変えて別のものになっていくと
そういった予想ができる。
私は人類の平均から見て体が特別頑丈なほうではないと言えるのは確かですが
やがて子孫を残すとしたら、健康であったり誰よりも生存に適する肉体に生まれる、
などの可能性は常にある。
また、霙姉が現在の魔法に近い能力を獲得したり
夕凪姉が高く跳ぶ子孫の祖になるといったような未来は考えられます。
獲得形質は遺伝しないらしいので、現在の努力を素に予想をするのは難しいですが
もともと夕凪姉の中に高く飛び跳ねる可能性のある遺伝子があるとしたら話は違うのかもしれない。
この枝のように広がり、あるいは比較にならないほどの枝分かれを経て
いつか遠い未来の地球に立つ生き物は
少しくらいは私たちに似ているところがあると想像してもいいのだろうか。
はたしてどれほどに多彩な変化に満ち溢れているだろうか。
たくましく腕を伸ばす木の枝は
ただ私の想像を刺激するだけで、答えを教えてはくれないようです。