星花

『力の素』
えーいっ!
とお!
下校の途中で
落ちていた木の枝を拾ったので
星花はその気になって
なりきっているんです。
先のほうに青い葉っぱが少し残った枝は
長さが二十センチと少し──というあたり。
戦場に赴く武将に見立てるには少し心細いですが
そこは気持ちでカバーする感じです。
ごっこ遊びを人に見られると
少し恥ずかしいくらいに大きくなったことは
自分でもわかっているけど
こっそり人目につかないところで
ポーズをとってみるのは
誰も止めることができない楽しみ!
やがて大人になって戦いへと向かうとき
子供の頃に憧れたお兄ちゃんの横へ、とか思うの。
厳しい修行を乗り越えてきました──とかも思ったりするかも。
今はカンフー教室に通っているだけだから
剣や矛の腕前はまったく鍛えていないけど
そのうち、たぶんね。
もしかしたらね。
できたらいいかなあ、くらいだけどね。
カンフーの先生にも教えてもらっている通り
鍛えた力は悪いことをするために使ってはいけない。
なるべく戦いに使ってもいけない。
いざというとき、
いつまでもやってこないほうがいい危険に
自分のあまり強いわけではない体と
大事に思う人たちがおそわれたとき、
せめて自分の身を守る努力くらいはできるように。
ただそれだけのために
休まず努力することが
何かを心の中に育ててゆく。
たまに自信になり、前向きな力となるのです。
矛をかざすのもいきなり戦いを挑むためではなく
大事な人との約束を守ったりするため。
生まれるときは違っても
死ぬときは共に、と誓い合えたら
星花はいつかその約束を守れるのでしょうか?
そろそろ毎日の積み重ねがそれくらいしっかりした星花を育ててくれているかな?
あと、体を動かし声を出して練習をすると
ごはんがおいしい!
という点についての
星花の主張は
教室のお友達も、先生も意見が一致しているようです。
お手伝いを任せてもらえるかどうかはそれぞれのおうちによるみたいだけど。
ただ、いっぱい遊んでも
嫌いなものだってもりもり食べられるほどおいしくなるというわけでは
ないみたい……
まだこれから学ぶ予知のある分野かもしれないね。
とにかく毎日
一生懸命に遊ばない日などない!
子供っぽい遊びも恥ずかしがりながら
大事な夢のため!
おいしいごはんのため!
お兄ちゃんをお誘いして
一緒にわいわい声を出してもらったうれしいので!
一本の棒がきらきら輝く遊び道具に変わります。
ここにいるのは
遊ぶことにかけてはそこそこの技を持つ星花。
誰か、決して負けないと名乗りをあげて
挑むものは──いませんか?