『ハッピーハロウィン』
楽しいのが好き。
うれしいのが好き。
みんなで笑うのが好き。
はしゃぐのが好き。
いつも好きなことがいっぱい。
つい、夢中になってしまうことばかり。
夢中になって、真剣になって
たまに息をついて
一休みをしている間だけは
これからも夢中になることをするんだなと考え、
そしてまた他の何も見えなくなるくらいに好きなことをして。
だから時々忘れてしまう。
いつも本気になれるのは、
ついそればっかりで他に何もできなくなってしまう自分を
実はとても近くから支えてくれる人がいると。
何も知らないみたいにはしゃいでいる横で
気がつかないうちに守ってくれている。
本当は、そのことに気がついていて
うれしくなるの。
だけど蛍は幸せ者だなと思ったすぐ後に
欲が出て、遊びたくって
わかっているのについ頭から抜け落ちて
うれしそうな蛍はずっとすぐ隣にいてくれるみんなに
うきうきしているところを見られてばかりいる。
小さくて、弱くて情けなくて
ただ明るいだけがとりえの蛍。
感謝の気持ちを伝えるにはいつも努力が必要なのだそうです。
毎日練習をくり返し、無謀な挑戦をしたくなって失敗をしたり
ときどき、ほんのちょっとだけ
うまくいったような気がしないでもない感じになる。
だから蛍は、そうなのかもしれないと思って
いつもみんなに感謝していることだけを伝えたくて──
幸せだと伝えたくてうずうずして、
よく失敗をしてばかりいるんです。
でもみんなによると
楽しむのも、本気になるのも、夢中になって周りが見えなくなるのも
生まれつきの能力はそんなに関係なくて、
才能や個性でもなんでもなくて
毎日の積み重ねとか続ける努力が必要なんだなって
蛍を見てそう考えることがあるんだそうです。
ほめてくれているのかな?
今日はハロウィンです。
トリックオアトリート!
10月は寒い日が続きそうで、あわててみんなの分を暖かく布を増やしたのは
まあ、どうにか間に合った感じ。
もっとかわいくできたはずなのに、うまくいきそうな手ごたえがあったのにな、
あーんって悲しくなってしまう部分も
あまりにたくさんありまくるのですが
でも蛍はみんなに助けられ、
今日もうれしくてにこにこしているんです。
こういうまさにお楽しみの時にこそ
せいいっぱいみんなと仲良くなることを忘れたくなくて
いっぱいいたずらを考えに考え、
ありとあらゆる場面とあらゆる相手を想定してきたのです。
というのは言いすぎですが、ちょっと気合を入れて考えてみました。
おやっ?
優しいお兄ちゃんは
小さい子たちがちゃっかりチャンスを逃さないのが得意な精で
次から次へとお菓子をうばわれ、
もしや手元に何も残っていないのではないですか?
あれあれあれー?
もしかしてそれって
大変なんじゃあないかしら?
いたずらばっかり考えて
ハロウィンの魔女に身も心も変わっている悪い蛍が
狙いを定めたら
大人しくさせるおいしいお菓子なんてないんじゃないですか?
あわててきょろきょろしたり
ポケットを裏返しにしても
ぜんぜん無駄なの。
これはもう観念するしかないのかな?
まあまあ。
長い長い人生、
こんな蛍を妹にしたために
あきらめるしかないときもやって来るのかもしれません。
そして、今がそのときかもしれないね。
もしかしたら、これから先も
仕方のない蛍だなって
あきれてしまうことだらけになるんだと思います。
だけど蛍は
いつも変わらず
お兄ちゃんがいてくれることを
うれしがっているんだと
わかってもらえたら本当にいいなと──
そんなふうに考えているんです。
うまくいくのかは別だってことも知っているんだけど。
だから、お兄ちゃんは
結局、今日も明日もこれからもずっと
仕方のない妹だなって困ってしまうよ。
ふふっ。
でも今日だけはいたずらをしてしまう決まりの日ですから。
普段とはちょっと違う困り方をしそうだね。
いたずらするほうもしないほうも慣れないようなやつだよ。
蛍もがんばります!
いつもありがとうございます、お兄ちゃん。
いつもありがとう、蛍のすてきな家族のみんな。
ハロウィンの日がやって来ました。
もしも、もしも少しうまくいったこともあって
楽しいって思ってくれる子が一人でもいてくれたら
蛍は、これ以上にうれしいことは他になんにもないんだよ。