綿雪

『可能性』
お兄ちゃんは
将来なりたいお仕事の話をするなら
電車の運転士さんと
それともバスの運転手さん、
どちらになりたいほうですか?
もしも──
両方今まであまり考えたこともなかったなあ!
というのならユキと同じです。
でも男の子は乗り物に憧れると聞きました。
もしかしたら、お兄ちゃんの好き好きやこだわりもあるのでしょうか!
みんなでおやつに集まるとき
どこかに行きたいね、と話題が出るのは
別に本当にどうしても行きたいときばかりではなく
ちょっと気になっている場所や
楽しかった思い出、
関係しているような好きなことなどを
聞いたり聞いてもらえたりできるチャンスなのです。
頭の中でおうちやお部屋を抜け出して
はるか彼方の遠い街に思いを馳せるのって
空想するのが得意な少し怖がりの子ばかりじゃなくても
誰でも夢中になるものなんだと
ユキは聞いたことがあります。
旅の行く先を想像して
それを面白く、わかりやすく伝えるのが誰より上手なのは
小雨お姉ちゃん。
麗お姉ちゃん。
それから──好奇心いっぱいのさくらちゃんですね。
本を読むのが得意であればちょっといいのかもしれないです。
さくらちゃんはまだまだお膝の上をおねだりして
お兄ちゃんと一緒に読むのが好きみたいだけど。
そうして、楽しそうな旅を思うならば。
いつだってみんなのこだわりがのぞいて見えるのは
私たちを運んでくれる
大切な旅の手段。
ゆっくり電車に揺られて景色を楽しむのも──
細かい予定を組み上げて行けるだけたくさんの場所を回る計画も、
それとも、ものすごい速さで駆け抜けて遠くへ向かうのも!
それぞれの魅力を伝え合うのが楽しい。
かっこよく運転もしてみんなを運んでみたいなんて話が出るのもこのくらいのとき。
なんだか本当に、ずっと遠くへ向かうことができそうな気がしてどきどきするのは
こうやってだんだん
みんなの意見が集まってくるとき。
あーちゃんは飛行機のお写真が好きみたいで、本を開いてほしくて甘えているみたいなの。
まだ赤ちゃんなのにすごいですね!
とても小さくても、家族の誰よりも遠くに行けるのかもしれない。
あこがれってすごいなあ──
うらやましい。
ユキはまだ、怖がっているのか期待しているのかわからないまま
すみっこでみんなの話を聞いて
勉強になるなあ、覚えることがたくさんあるんだなって
うれしそうにしているってみんなに言ってもらえる──今はそれだけなのにね。