夕凪

『シャッフル』
お兄ちゃん!
……
お兄ちゃんは
夕凪が少しくらい大変なお願いをしてみても
ぜーんぜん何一つ怒らないで聞いてくれるでしょ?
ぜったいそう!
信じてる!
たとえば夕凪がけんかをして
服とかくしゃくしゃになって帰ってきた日。
たとえば夕凪が坂道ですべって
どろんこになって帰ってきた日。
たとえば夕凪がお兄ちゃんの手の中の甘いアイスを
自分でも気がつかないうちにじろじろと見つめていた日。
お兄ちゃんは怒らないで夕凪の相手をしてくれたの。
それに、アイスもくれた。
そうしたらもう
夕凪だって信じていい人はわかるんだよ!
あっ、今日は大丈夫。
猫を拾ってきたとか無茶なお願いじゃない。
お兄ちゃんなら簡単に叶えてくれるよ!
大丈夫!
だってさー
聞いてよ。
ひどいんだよ。
夕凪としては一生懸命考えた末の
ひらめきだったの。
そろそろ今日当たり、また何かとんでもなく面白いことが
夕凪の頭の上へと隕石みたいに降ってこないかと
そのための手段をああでもないこうでもないとひねりだす、
みんなにも相談する。
そこで出てきたナイスアイデアがお泊り会。
長い時間を過ごす夜のお部屋を
いつもとちょっと違う刺激で味わう三連休っていいでしょう?
でも全員でひとつところに集合したらうるさいから。
ベッドを入れ替えるくらいにしましょうって
誰が言ったんだったかな?
虹子ちゃんかな?
もしかしたら、たまたま通りがかったお兄ちゃんだったかもしれないじゃない?
たまには学校から早く帰ってきてくれたりして。
それでくじびきもしたのに、
夕凪は何とお兄ちゃんのところにお泊りできる権利まで引き当てたのに
お兄ちゃんに勝手に決めたからダメって
そんなの悲しいよ!
いいって言ってくれると思ったんだもの!
でもね、連休っていうくらいだからなんとあと3日もあるし
お兄ちゃんならお姉ちゃんたちを説得できるから
夕凪は何にも心配していないの。
それでも今日は自分のお部屋に戻るしかないのが
あーあって感じ!
少しさみしい!
リッカお姉ちゃんは、さみしいときに
好きな人に投げキッスを送るんだって。
引き離されたふたり!
というわけで夕凪もやってみる。
うんむむむ……
くちびるをとがらせて
ぶぶぶぶーっ!
こうだったっけ?
じゃ、説得よろしく!
今度はお兄ちゃんとあまーい投げキッスの練習しましょ!