ヒカル

『旅人』
半袖、Tシャツ、短パン、ミニスカート。
身軽な格好が
だんだん似合わなくなってくる時期。
外ではあまり体を冷やすのは嫌だし
いちおう人目も気にしないと。
まだちょっと暑い時間もあるけどしかたない。
いざとなったら上着を脱いで荷物になるのはあきらめて
だんだんと重ねる服を選んでいく形。
どうしてもそうなってしまうのだから
家の中くらいでは気楽な薄着でいたいのに
まわりに見つかってしまうとどうも
だらしなく見えてしまうのがいけないらしい……
毎年このくらいになると──いや、でも
なんだか年中、寒そうに見えるって怒られているかも?
まあそういうわけで
みんなの目を盗んでこっそり涼しさを楽しむ
落ち着かない生活をはじめたんだけど。
でも、家の中にいてソワソワする理由は
こんなだらしないところを見られたくないだけでは
ないのかもしれない。
ちょっと様子を眺め渡すと
窓の側で静かな庭を眺めながら
ぼーっとしたり、考え込んだり
本を広げてうとうとしたり
一人の世界に浸っている顔がたくさん。
ほんの少し前まで
ぎらぎらした日差しがうるさいくらいにまぶしかった頃は
暇があったら誰かを探して
遊びたがるなり家事の手伝いをさせるなり
暑さでへばってしまうまで
動き回ってじっとしていられない子ばかりだった印象なのに
日ごとに深まっていく秋とはそれほどにも──
なんというか、
人をのんびりさせるものなんだろうか?
ちょっとどこかに出かけてみようかなという時も
勝手にみんながついてきて騒いでいるのが自然だった時期は過ぎて
いつのまにか一人であたりを見つめて歩いている。
別に小さい秋を探しているわけじゃないのに、のんびりと──
なぜだろう?
変わり行く見慣れた景色を見逃さないようにしているみたい。
私がだらだらしているように見えるのは
ゆっくり時間が流れる季節と
着替えを選ぶのが面倒くさいのが理由で
もしもまわりを歩いてみたときに
季節のせいで変わってしまった眺めばかりで
なんだかさみしくなってしまいそうだからじゃない。
と思う……
でも、このままずっとごろごろしているわけにもいかないからな。
たぶんしばらくゆっくりしたら
今度は一人で歩くんだろうけど
そうしたら絶対
何か面白いものを見つけなくちゃ。
大丈夫。
さみしいことがあるかもしれないけれど
こわがらなくていいって思えるいいものが
そのあたりですぐ見つかるよ。
いつもそう思って歩き出すんだ。