『フラッグ』
押入れの奥から出てきた
くるくる巻いた白い旗。
もうひとつ派手な赤い旗。
きれいに袋にくるんであって
中身はほこりもかぶっていない状態だから
すぐに使えそうなの。
こんなに丁寧な保管の仕方ができるなんて
ただものではないわ。
蛍姉さまかしら。
ごっこ遊びの本格的な小道具みたいな……
それとも実用的な利用法が何かあるのかな。
団体行動の引率に
笛とセットで。
人前では恥ずかしいけれど家の中ではいけそうね。
笛は──
近くに見つからない。
似合いそうな帽子とか
白い手袋とかもどこにもない。
持ち主を判断する材料はゼロ。
最近使われた様子がどこにもない。
よって──
誰に確認を取ったらいいかわからないものは
仕方がないからこのまま広げて使います。
いけない?
でも、仕方ないのよ。
見つけてしまった時点で、ううん、謎の袋を見つけた瞬間から
ピンと来る予感があったんだから。
家族の押入れは
子供のときから、埋もれたおもちゃの発見率が高かった場所。
私が大事なものをしまっておくときは
誰にも言い訳が出来ないように
すぐにはがせない形できちんと名前を書いておくようにしないといけないわね。
旗を上下に降ってみたら
新しい遊びだと思ってすぐに妹たちが寄ってくる。
ちがうちがう!
呼んでいるように
ちらちら揺れても
手を出したらだめ!
これは真剣に練習をしているところ。
今はまだ、旗の振り方がよくわかっていなくても
いつかは役に立つと思うの。
いいえ、きっとその時はもうすぐよ。
ほら、さっきより上手に揺れてる!
ああっもう!
すぐ触ろうとする。
遊んであげようとしているわけじゃないのに!