星花

『夏のお話』
今日も朝からぐんぐん暑くなりました。
強い日差しが差す中を
これは大変だーとみんなで騒ぎながら出かけました。
また暑さには気をつけなきゃとか
帰ってきたら汗びっしょりで着替えないとなんて
なんだか不思議と楽しくなって話をしていたのに
昼ごろから、薄く小さな雲が太陽を隠すと
ほんの短い時間の曇り空が
半袖の腕をすうっと冷やす肌寒さを運ぶの。
気温が上がったり下がったりしやすい日の
帰宅の直後にすぐはじめたのは
もうすぐできあがるのを待っている
お姉ちゃんたちの作る暖かな服の進み方の噂話。
それから羽織るものを探して
さらに、日が落ちてもっと冷え込んだら大変だからと
夜の掛け布団を探して片付けた記憶のある場所を走り回るの。
はーっ、
たちまちのうちに季節は変わってしまうものですね。
少し前、暑くなっていく頃に
気がついたらお部屋のタンスの中身ががらりと入れ替わっていたのと同じように
夏の続きみたいだった一日も
家の中で見る服がすっかり変わっているの。
涼しそうだった裸みたいな子供たちも
いつもよりきれいな長い袖。
模様も色もなんとなく暖かそうに見えるのを選んでいるような
新鮮な景色が
リビングに人が一人増えるたびに大きく広がっていくの。
ほんの少し前まで
ぎらぎらの暑い日々がいつか終わるなんて
カレンダーの日付くらいでは全然実感がなかったのに
引っ張り出してきたばかりの服に袖を通してみると
ついさっきまで薄着でいられたことが信じられないくらい
しっくり馴染んでしまいました。
こんなふうにしてこれからだんだんと
寒さで少し心細い感じにも慣れていくのでしょうか。
それまでにもまだ汗ばむ日が
もうちょっと続くのかもしれないですけど。
終わらないと思っていた楽しい毎日は過ぎていっても
次の季節の準備をしていると
すぐにわくわくしてくるの。
これからまた覚えないといけないことがいっぱいですね。
いつでも薄手のものを一枚羽織る準備をしておきたいなんて──
夕凪ちゃんと一緒に散らかしたタンスを見ながらぼんやり考えているところです。