『変わり行く日々』
春になって変わりはじめることもあり
蛍の周りでも
なんだかあわただしい。
海晴お姉ちゃんは
小さい子たちがすくすく育って
連休の家族旅行の行き先にとてもうるさいって
ちょっとうれしそうだし
立夏ちゃんはこれから夏の暑さに近づくと
帰りの寄り道に食べるアイスはチョコとバニラとどちらにしたら?
スキップしながら悩んでいる。
観月ちゃんはお空を飛んでいく怪しいものが見えて大変らしいの。
なんだか長いものだったんだって。
長い……?
いったい何でしょう?
氷柱ちゃんはよくわからないけど
やっぱり難しい顔をしているし
吹雪ちゃんもケーキの新しい切り分け方を考えたって試したがる。
そんな新生活の四月。
蛍はというと
特に何か
あったのかな……?
何もないのも寂しいような気が──
あっ
あれがあったかな。
花柄に変えたおちゃわん。
いや、それもちょっと違うな。
でも考えてみてください。
ふだん使いの食器はそんなに変えるものでもないでしょう?
だからこれからも手にとって眺めるたびに
ああ、新しくしたのは春のあの時で
やっぱり特に何もない毎日に
ちょっと変化を付けたくて、みたいなことを。
って、やっぱり何もなかったんだ。
まあいいや。
みんながちょっとうらやましくって
思いがけないトラブルとチャレンジ、
見たことのない刺激に憧れるようになるのも
たぶん新しくはじまったときめき。
一年や二年経ったらその春には
蛍はめっきり成長して
みんなとまた新しい出会いを喜んでいる。
練習もしていないのに
自然に体が動いている。
今はまだそんなことにはなっていないけれど
たぶんこういうのも順番ですよね。
春だからこそ
きっと忘れられない始まりの予感はそうなの。
我が家では年上のほうの
蛍お姉ちゃんはちょっと遅くてもいいんです。