綿雪

『はたらくお姉さん』
よく晴れた日はお庭から
ちっちゃい子たちの元気な声がいつまでもやまない。
どこまでも届きそうな
あの高い空にまで聞こえそうなくらい。
そんな歓声にも
よくおどろかされる響きは混じるので
とても想像がつかないくらいの勢いで
知らない虫を見つけたり勢いをつけて転んだりしているのが
小さなユキの近くにいるかわいらしい妹たちです。
転んで膝をすりむいたら
その時だけは出番だと思って
てきぱきすばやく
白い救急箱を持って駆けつけるユキのお仕事。
手当てをしておかないと後から痛くなってしまいますもの。
しみるからって逃げようとするのを
大丈夫、怖くない。
ユキが言うんだからまちがいない。
看護婦さんのお仕事には詳しいから、
だからお願い、と
擦り傷を抱えてびっくりしている子に
大人しくしてもらうまでの大変なお仕事です。
本当は怖くないというわけではなくて
傷にもしみるのは確かだし
いちおうお医者さんに行く機会は多くても
ユキが救急箱を開いて手当てをするのに一番慣れているかというと
そうではないんですけど
だからといってこっちがあわてたり
ちゃんとできるかわからないってはっきり言ってしまったら
ちっちゃい子も不安になるでしょう?
だからできるだけのことはやろうって
決めたからやる、
ちょっと震える手をごまかしたり──
しているんです。
もちろんちゃんと
頼れるお兄ちゃんやお姉ちゃんたちにもお知らせして
怪我がひどくならないか見てもらう。
ユキのしたかったお手伝いは
そこまでひどくなかったか
確認してもらわないといけないから
実は本格的な治療はかなわなくて。
お医者さんの技を身につけた
一年生のお姉さんは
実は、そう思ってもらえたら
できることはそれでだいたい済んでしまったと安心しているの。
ちらっと横を見ると
壁掛け鏡に映るのは
なんでもできそうな顔で自信に満ちた
みんなに慕われるお姉さん。
ちっとも体の弱い子には見えないで
にぎやかな声に囲まれています。
そんなふりをしていることが
全部本当だったらいいのになあ。