氷柱

『予感』
不安定な天候の日に挟まれた
貴重な晴れ間。
でも正確に言うなら
晴れときどき曇りという感じ。
だから数日溜まっていた洗濯物が一通り乾いたからといって
ぎりぎりなんとか片付いたというだけだし
期待されても
氷柱は別に半裸になって踊りだしたりしない。
そりゃそうよ。
そんなの立夏じゃあるまいし。
まあ立夏の場合
いきなり裸になったというのか
洗濯物だからとそれだけを考慮して
ぽんぽん上着を放り出し
動きやすいシャツ一枚になっただけというか。
干すときに濡れてもすぐ乾くから便利なのだそうよ。
合理的でいいわね。
気温を考慮に入れなければという条件付きだけどね。
一緒にどうって誘ってくるから
下僕も気をつけてね。
断ってもあまり気にせずに追いはぎをしようとしてくるし
それを腕力と技術がものを言うスポーツだと思っている節もあるから
裸に剥かれて見苦しい姿を見せないように勝ち抜いてね。
確かに昨日、立夏が喜んでいた通り
首輪でもつけてちゃんと見ておきたいと年長組で話をしたけど
平気で裸同然の格好になって鼻をたらしていると……
どうせ逃げないように縛り付けたところで大人しくなんてしているわけがないし
必要なのは首輪ではなく
しつけを施しつつ行動を制御しやすい手綱のほうなのではないかと
そんな相談もしてみたわ。
人間用の手綱。
中学生になったくらいのおてんばな女の子に合わせたやつ。
ホームセンターにでも行けば置いてあるかしらね。
姉様たちの提案では
そろそろお年頃なので
恋でもすればちょうどよくおしとやかになるかもしれないとのこと。
へえー
恋って便利ね。
話を聞いていたら何でも出来る万能のエネルギーらしい。
その恋愛感情とやらでせめて寒い日は裸にならない常識を身につけたらいいんじゃないの。
そんなふうになる未来は想像も困難だけど。
でも立夏
風邪を引かないでいられる知恵がつく程度になれば
別にそれでいいわよ。
高望みをしてもしょうがないし。
それに信じられないれべるの元気と明るさと
すぐ立ち直る前向きさは
貴重な能力ではあるわけだから。
あの子が涙目に変わるような事態は
迷子にでもなって寂しいときだけだっていうのが自己申告だけど
底抜けに明るいんだから
きっとどこに行ってもそれなりに順応して
そのうち甘くておせっかいな身内の助けがなくたって
しっかりやっていけるようになるって
一番信じられるのは
ああいう子なんじゃないの。
私には全然ない才能。
身につけようとしたって
そう簡単ではない天然の恵みみたいな。
うらやましいわ。
でも人間は努力が大事な生き物だから
私だってすぐに追いつく
素質の塊なんだけどねっ!
明るくなくてかわいくなくても
今日は風邪を引いていない分、私のほうが有利ということね。
ええ、もちろんそうなる気はしていたわ。
今のうちに差をつけられるよう
努力を積んで、山ほど技能を修得しておくの。
一晩寝たらけろりと元気を取り戻して
あっというまに追い抜いていきそうなんだから。