立夏

『ランアンドゴー』
雨上がりのお庭は
しめったにおいで満たされるお庭。
くんくん鼻を動かす
リッカのテンションがふりきれるわけは
水たまりを踏み越し
泥に滑る靴の裏の感触。
ボールを投げて遊びはじめたら
転んで泥まみれになるくらいちっとも怖がらないのが子供たち。
先頭を駆け抜けていく
ふたつに分けた髪。
ひるがえるミニスカートと
風を浴びたすずしいふともも。
お空を飛んでいくおもちゃを見ると
追いかけたくなるって
人類の本能だよね。
そういう気持ちは大事にしないといけない。
我慢はとりあえずあと。
だから、多少大きくなっただけのリッカは
雨が降ったら跳ね上がり
雲間から日が射すと
足元も見ないままでいて
いつのまにか泥を蹴りまくっている。
冷たい風の感じがいつもと違うのが
みんなを動かすって
わからないのは
家の中で見ていた氷柱ちゃんだけなんだよ。
点々と汚れがついた靴下で戻ると
おどろいて声を出し
うなだれて声を出し
とめても聞かないような気はしていたと
一言であきらめて
それから、高く宣言をするの。
洗濯とお風呂の時が来たと。
わあっ!
わおわお!
明日は洗濯物が乾きそうで良かったね。
きっと氷柱ちゃんが安心して
そしたらまた、今日は見たことのない顔をするの。
その横にいるリッカは
特に反省することなく
晴れたーって喜んで氷柱ちゃんの手を取る。
もうわかりきった未来、
もし止めようとしても
いつのまにかそうしている。
あんまり泥も汚れも怖がらないと
おねーちゃんたちは相談して
首輪を付けておきましょうと言う。
えーやだー。
そんなのすぐ外して逃げちゃうよ!
元気だもん。
勝手にどこかに行っちゃって
気ままに歩きすぎるとたまに
帰り道がわからなくなったときだけ
心細くなって少し反省するタイプだよ。