吹雪

『芽吹き』
春は新しい命が生まれる季節だと聞きました。
四月のような暖かさになり、また寒さが戻ってくる日々を重ね
次に育つ命が今も大きく育ちつつあるのだと思います。
まだ葉をつけない枝の広がりにも
良く見ると小さなふくらみを見つける。
やがてつぼみが開いて花を咲かせるまで
どれくらいかと小さい妹たちに質問されるので
どれくらいだと答えたら
いちばん正解に近いのだろうかと
頭を悩ませるところです。
なにしろ生命は多様性を伴うから
花が早く咲くつぼみも、遅れるのもあるはず。
とはいえ確率の面で有利になるよう
多くのつぼみをつけて多くの花が開くことに期待する設計だと思われます。
もう少し時間が経てば
おそらく多くの花が開く。
それしか言えません。
それに生き物が活発になる季節と言っても
生命に対する疑問は
数多い人数の家族をもつ私たちの家族なら当然抱くはず。
お気に入りのぬいぐるみを
食卓に並べたらいけないのはなぜなのか。
情熱を込めて作り上げた積み木の生き物が動き出さない理由とは。
地球の外で発生した生命がタンパク質構造を持つと限らない以上は
どのような新しい生命の形が新しく発見されてもおかしくはないし
春に繁殖期を迎える生き物が多いのと同じで
生きているのと区別がつかないロボットが仲間を増やそうとしたら止める理由はない。
ドラえもんはまだ現実には存在しないが
アスファルトの隙間から伸びる生命力の強い蔦があるように
地面に種をまいたらネコ型ロボットがたくさん育つ未来もありえなくはない。
そうなったら収穫は大変そうですが
私たちの家には男の人の手があるからなんとかなるかもしれません。
愛らしいぬいぐるみたちの将来などについて
こういった話をしていると
やはり次は人間が生まれるまでの話題になります。
フランケンシュタインの神秘に習って電気が鍵を握るのでしょうか?
果たして何が人の手に許されない禁忌であり
何がプロメテウスのもたらす進歩の先駆けであるのか
未来を見通すすべのない人間には決して判断が出来ないとなれば──
いえ、時間移動もいずれはブレークスルーの前に砕け散る壁だとすると
現在までの人間にとっては、と限定する必要がありますが
ともかく今日の私は
自分の信じる道をひたすら進むことしかできないため
注意深く、現時点における科学的な手法を基にした観察によって
比較的頼りになると思われる判断材料を集め
昨日まで不可能だった壁を破り新たな道筋を作る。
どうやらまだ知識量が充分でない私には
未知への新たな工夫を重ねることでしか
春を迎えて勢いを増す命の営みに参加する手段はないらしいというのが
なるべく冷静に判断を試みた
春も間近の私の状況のようです。