春風

『ほねやすめ』
家事を預かる
一家の母親役に
なれたらうれしい
春風です。
みんなを支える裏方さん。
激しいスポーツに夢中になっている子も
学校の勉強に向き合う子も
はたまた一休みのためにキッチンにつまみ食いに現れた子も
まとめて春風のかわいい娘のようでかわいがってもいいだなんて
できたらいいけど
まだまだうまくいかない
花嫁修業中かも。
どうかしら?
歌を口ずさんで
掃除機をあやつり、フライパンを揺らす。
洗濯籠からより分けて
洗濯をはじめたら
タイマーを見つめながら次の準備を考える。
そろそろ積み木遊びの約束をした時間が迫ってきたな。
大きな声が近づいてみんなが帰ってくる頃でしょうか。
どうもやりたいことを優先して
ぱたぱたスリッパを鳴らしていると
後回しにした宿題や
読みかけの雑誌、
図書館で見つけたきれいな表紙の本が
たまには腰をおろして落ち着いたらって
呼んでいる声が
遠くから聞こえてくるような気がしてしまいます。
家のあっちにいたかと思うと
たちまちうなりをあげて急ぎ
知らないうちに背後を取るかのように
掃除機を持ってこっちに現れる春風は
うるさいだろうか、
おしとやかではないだろうか、
王子様は鼻息も荒い春風が近づくと
ときめくのとは別の驚きで
とりあえず春風には好きにさせておこうと思ってしまうのではないか。
逃げなくてもいいんです。
こう見えて、
活動的な日々にはメリハリが大事だと
あんがい体で知っているのだから
休憩時間を充実させる過ごし方には
挑戦していきたいほうなんです。
それは知的で文化的な本を開くタイプの時間ではないかもしれないけれど
今の季節、日当たりのいい窓辺や
まわりの声から少しはなれた静かな部屋の二人用のソファ、
あるいはこちらの声も漏れないような場所で
静かに内緒の約束をするとか
忙しそうな王子様を案内する機会はあまりないけれど
いざチャンスが来たら
春風は結構リラックスの世界に誘うことができるかも……
少なくとも試してみたい二人きりの過ごし方はあるんです。
ああ、それでも王子様が望むなら
ゆっくり眠りをあげられるように
春風がたまにこっそり潜み
誰にも何をしているのかわからないと言われる
秘密の場所へ案内が出来るかも……
ええと、たいていはうたたねをしているんですけど
とにかく意外と
そういうことに関しては
相談に乗っていけるんじゃないかな?
私たちの住んでいるこの家は
景色がいつも色とりどりに移りかわって
差し込む光も昨日とは違う色に見えるようだから
あんなに厳しかった寒さが息をつき
眠っていた暖かな陽気は辺りをうかがうように首を伸ばしはじめる
私と王子さまの住む場所だから
はしゃぎ続けることも、眠り続けることも
うまくできないでいる
私の全てを
知るタイミングとしては。
今の変わり行く季節がぴったりと言えます!