ヒカル

『愛の力』
今日は変わった場所から
みんなの楽しそうな声が聞こえてくるな。
細かい作業が苦手だって騒いでいる声も
なぜか楽しそうに
明るい笑いと一緒に響いている。
昨日までできなかったことを試してみたくて
教えてもらいに行き
失敗をしては
悔しがって。
できるわけがないとあきらめることを
いったんどこかに忘れたみたいに
始めてみると
繰り返していたらひょいっと成功している、
なんて瞬間。
幾度もキッチンの中で起こっているんだって
漏れてくる声だけでわかってくるような
うれしそうに──
とてもうれしそうに
はしゃぐ小さな子供たち。
どこから取り出すエネルギーなのか。
最初は不安で縮こまっていた子たちが
どうして成功するまで続けようとする気持ちになれたのか。
私も何度か
同じ経験があるような気がするんだけど。
両手で絞る形で教わったとおり、練習を続けて自然な力で竹刀を握ったとき。
うまくいくような未来はまるで見えない挑戦なのに
私はその一瞬だけは
よそ見をしないで前だけを向いている。
今までいっぱい続けてきた
それはただ挑むだけで楽しかった、
そのはずなのに。
みんな、だいぶチョコレート作りもうまくなったと聞いた。
もともと素質があったんだろうって話をしてる。
先生がいいから、とか。
普段のお手伝いの成果が生きたとか。
私が参加する理由は
指を折って数えるたびに増えていくんだ。
そのはずなんだけど。
明日は次のステップに進んで
ラッピングに挑戦。
それと、やり残したことがあって練習を続けたい子は
またもう一度実習に参加してもOK。
あさひがきれいなリボンを髪に結んでもらって
明日のための宣伝のお仕事をしている。
ごきげんで誰彼かまわず
見つけ次第にとびついていく。
うれしいんだな。
ためらってしまいそうで勇気が必要になると
退路を忘れてぶつかっていくのはあさひが姉妹で一番得意みたい。
今年のバレンタインは、いいプレゼントができるんだろうな。
できないかもしれないことは
逃げる理由にはならない。
失敗の可能性を恐れても何にもならないと
わかっていても
ためらって動けないまま
大事だと思っているはずのことだけがどうしても
解決のきっかけが何も見つからなくて立ち止まったまま。
そういうときが誰にでもあるんじゃないかと
思ってみたりする。
気持ちが時間をかけて変わっていくのか
これからどうなるのかなんて何にもわからないままで。