観月

『じゃんけん』
古い昔から人は
神に祈り、神に試され
目に見えない運命に愛された者も、呪われた者も
等しく人としての命を生き抜いてきた。
お告げに従って掘れば水が湧き
龍の住処に雨を願って飛び込むことも
風に運ばれる病を森の社が沈めると信じ
大きな力に動かされて
感謝の歌を語り継ぎ
今、わらわがこの時に遊んでおる。
なぜそうなるのか誰も説明できない
不思議な力は
氷柱姉じゃが言えば偶然で
海晴姉じゃが言えば愛で
わらわの信じるところによれば
なるべくしてそうなったもの。
何もできない弱い生き物が
今日も翻弄され泣き喚きながら生きているようじゃ。
そんな日々の中にたまには
泣いたそばから涙も乾かないうちに笑いがこぼれるものがあらわれても
決まったとおりの定めのうち。
喜んでおけばいいだけのこと。
兄じゃは運任せは好きか?
自分の運命を
ずっと伝わる祈りの踊りや
縁起のあるお守りや歌に
まるごと乗せて成り行きに任せる覚悟はできているのか?
わらわの好きな遊びはじゃんけんじゃ。
力が強くてもそうでなくても
行うことは等しく同じ。
思いつきでも
理屈があってもよくて
信じた一つを心に描き
結果が出るのを待つ以外にできることはない。
みんなで参加して
おさがりを分け合うときや
おやつの大きいほうを選んだり、寒さに白い息を吐きながら決めるお風呂の順番。
だいじなことは
自分ではどうにもならないなら
運任せ。
あとは天が見ている日頃の行いがものを言うだけであろう?
幼稚園から帰った後の
お暇な宵に決めるのは
おもちゃの取り合い。
兄じゃと遊ぶ順番。
好きなご本の読み聞かせをおねだりするまでの選択と
ぎゅうぎゅうみっちりか、寝そべって過ごすか集まる場所。
全ては言葉で説明できない力におまかせして
行いの良かった日のできごとを思い描くのみ。
まったくままならぬばかりで
興奮して
また新しい踊りがはじまるのじゃ。
兄じゃは日頃から徳を積んでおるか?
誰が望みの未来を形にするか
やはり、いつもみんなが家族の中心に思い描く
兄じゃの願いが一番強いなら
各々思いが乱れ舞うじゃんけんの舞台でも
こっそり耳打ちで人に知られないように
応援してもらえたら、何にも増して頼もしい力になるに違いないな!