海晴

『おもちゃあそび』
小さい頃は
お気に入りのおもちゃがあったら
いつまでも手放さないで持ち歩いて
ママがあきれてしまったような
かすかな記憶が残っているの。
そんなによく思い出すほどのことではないけど
今でもおうちの中をおおはしゃぎで走り回る
小さな子供たちが
真剣におもちゃを見つめて
遊ぶときも何度も何度もお気に入りの子と過ごすのをくり返し
いつまでも飽きないみたい。
うっすらとした思い出では
私はなかなかここまで熱心な子供ではなかった気もしたり
それともやっぱり、いつも夢中だったかもしれないと思い直したり。
今となっては汚れも目立ち
ボタンも取れてしまったお人形たち。
押入れの中で眠るあの子たちと
今もさくらちゃんたちが毎日続けているように
自然と熱がこもっていく口調で
いつまでも終わりが考えられないみたいに夢中になっていたのかな。
といっても
懐かしいからってついその気になってしまったら大変。
子供の相手は
延々ときりがなく
ひたすらに続いて
ちょっと電話が長くなったりしたら追いかけてくるよ。
しかも、お気に入りの基準は
大人には計れない独自的なもので
お誕生日にがんばっておねだりをしたおもちゃよりも
ひらひらのカーテンに隠れるほうがお気に入りだったりするの。
同じ調子でスカートにまで潜り込むようなときは
止めるのも体力勝負。
私のスカートの中だって大事だよね?
しかも驚いたことに
そうしてわいわい遊んでいたら
あっというまに日は暮れて
気付いたその時には
時計の針がいつもより早く進んでいるのを発見する。
知らないうちに妖精たちの輪に入って
現実の世界とは違う場所にいたのかも?
あ、それからね。
お誕生日の贈り物をとっておくばかりじゃなくて
麗ちゃんは買ってもらった大事なおもちゃを
じーっとながめて
おそるおそる触って
湧き出す感動に目を輝かせている──
いつもそんなふうにしているよ!
なんだか小さい頃に特別な本を見つけた自分を思い出すね。
いつも開いていたお天気の本が小さな海晴の将来を導いたように
麗ちゃんの周りに敷き詰められたかわいいレールは
どこか新しい場所に運んで行ってくれるのかしら。
私たちも知らないものを見つけ出すきらめく瞳。
明日もみんなの夢中な日々はやって来るよ。
私たちもそのすぐとなりで
また大変な時間を過ごします。