ヒカル

『週末の天気』
すっきりいい気持ちになる晴れの日も
風は冷たく頬を切り
私たちの街は冬真っ只中。
知らず知らずに急ぎ足になっていた帰り道も
ぷるぷる震えて待っているみんなのことを思う。
関東地方のあちこちで
雪の予報がちらちら見られる
日曜から月曜にかけての
休日を挟む夜。
こんなに晴れていたのに、
そう残念に思う気持ちと一緒に成り立つ
寒いからそうかもしれないって
受け入れ準備が整いつつある複雑な胸の中。
もうまもなく
きんきんに冷えた窓の外に
白い雪が舞い始めると思うと
困ったな。
また子供みたいにソワソワするせいで
海晴姉にからかわれてしまうんだ。
折りしも世間は
成人式だろう?
やがて来るその日を
なんとなく遠く近く距離を測る
はたからは大人びて見えるらしい考え深そうな神妙な年を
去年みたいにまた繰り返すならともかく
なんでわざわざ
子供に戻ってしまう雪の日に当たるのだろう。
いや、
降るかどうかはまだわからないけど。
どちらかというと、はっきりしないほうが
降りはじめる頃合いで
落ち着かなくなる事態が多い気がする。
雨が降るのと同じ成分が
ただ、ちょっと冷えて
白くなっただけで
どうして小さい子はびっくりするのかな?
積もるわけでもなく
寒くて面倒なだけだとわかっていて
毎年毎年
飽きもせず。
雪!
と聞いたら
何か口の中で
寒いからとか
むにゃむにゃ唱えながら
目をやるのは
窓の外。
はるかな遠い空。
見えるわけもない
灰色の雲の中を
探すみたいに目を凝らす一瞬。
またこれで
一年分大人になった経験も吹き飛ばして
去年みたいにはしゃいでいる自分が思い浮かんでしまうんだ。
十一月の末に降ったから、だいたい一ヶ月ぶりだな。
白く舞い散る景色に心を奪われずいられるほど
大きく立派になれる出来事が
あれ以来あっただろうか?
なぜか思い返すといつも
はしゃいでばっかりいたような記憶ばかりが
真面目に思い出す邪魔をする。
ううん、決して
本当にそんなふうにはしゃいで笑ってばかりいたわけではないはずだ。
おかしいな。
なぜだろうか。
誰かが理由を知っているのか。
あんまりうまく年を重ねた気がしない理由が
いつか成人の時にでもわかるようになるのか。
教えてくれる人は
私には、たぶんまだいないんだ。