海晴

『120点』
うわああっ!
しまった……
元日に届くぎりぎりになんとか書いた年賀状の束……
ついさっきの大掃除の途中で部屋から出てきちゃった。
そういえばあの時期はちょっとばたばたして
投函が後回しになっていたっけ。
ああ、どうしよう……
ま、もうどうにもならないことは仕方ないか。
それはおいといて
今やっておくことは、と。
あれっ?
もう紅白も終盤で
今年も終わり?
わああーっ!
うそーっ!
心の準備ができてないよ!
とりあえず、まずは落ち着いて。
さあ、今しておかなければならないことからはじめよう。
できてきたおそばをすすって
おわんの中を残さず食べたら
来年も細く長くの願いを込め、そのあと。
間に合うように
一番大事な
私の家族のために。
今年の最後の日記を書かなくちゃ。
大丈夫。
何も心配いらないよ。
やがて来たるこの時のために
今年はちょっと意識して
どんな出来事があったかメモをとっておいたはず……
あ、あれ、メモはここにしまって……ない。
どこに置いたっけ?
ううーん。
最後の数日、ちょっと駆け足だった大掃除のラストスパートは
どうやら問題があったみたい。
掃除も年越しも
すべては普段からの心がけなのね。
こうなったら仕方ない。
準備一切なしでやりましょう。
おほん。
今年一年おつかれさまでした。
あわてることも、ばたばたすることもあった日々。
毎日が大変で
大騒ぎで
いつも一生懸命だった私の家族には
いつもみんなの真ん中にキミがいて
楽しい時間ばかりでした。
思い出すと、夢中で駆け抜けた記憶ばかりがよみがえってくる一年の終わり。
どうやら最後まで
一緒にここまで来ることができたね。
いろいろあったけど
最近の話だけでも、掃除がまだ終わっていない子や
おいしいおそばをつい腹八分目より食べすぎて眠れなくなりそうで
ジャマにならない部屋の端っこでがんばって体を動かしている子もいて
まあ、気をつけてくれていてもジャマなんだけどそれは言わないことにして
全てがうまくいった
悔いのない一年を過ごしたと言える子は
どうも一人もいないみたいね。
ついさっきまでは
大掃除も終えて、おせち作りのリーダーとして働いた
私が一番きちんとしているから
褒めてもらおうと思っていたくらいなのに
ああ……
それでも。
今日も家の中でみんなの顔を見ていて
元気なみんなの声を聞いていると
この子たちが一年を無事に終えられてよかった。
私もこの子たちと一年を一緒にいられてよかったと
たぶん説明できるような深い理由もなく
区切りを迎えたというだけで胸が熱くなる。
私は今年も
大好きな人たちと揃って
年を越していけるの。
みんな。
一年よくがんばりました。
泣いたりわがままばっかりで
自己評価では不満がいっぱいあるとしても
私から言いたいことがあるの。
今、私は
家族と──
この一年を過ごせた経験を誇りに思います。
最高の年だったよ。
私がみんなに
100点満点をつけてあげる。
今日、大晦日の最後の時に
風邪をひくこともなく元気でいてくれるのがうれしいから
さらにおまけで120点をつけたいの。
なにもかも完璧にはいきませんでした。
だけど、とても大事な思い出が増えた一年になりました。
今年一年ありがとう。
また来年もみんなと過ごしたいです。
今。
言いたいことはこれで全部。
だからこれでおわり。
明日になったら
その時に思いついたことを
きっとキミをつかまえて
どうしても聞いてもらうの。
では──
あとは新年を待つばかりになるわね。
そういえば、ひとつ相談があるの。
初詣に行きたいおすすめを聞いた神社を
確かメモして
このへんのどこかにしまっておいたから
それを見ながら話し合って
明日の朝からの予定を……
今のうちに……
間違いなくこの引き出しだったはずなんだけど……
ええと……
まあ
なんとかなるでしょ!
きっと明日はいつも以上ににぎやかだから
このあと、時計の針が0時をさして
起きている子たちで静かに
あけましておめでとうの挨拶が言えたら
すぐに寝ておかないと体力がきついかもね!
キミと共に
毎日を過ごしていく家族たちのことを
来年もよろしくお願いします。