夕凪

『にじゅうきゅう』
今日は29日!
一年ももうすぐおしまい。
お兄ちゃんは今日、どうだった?
なんとなく半端な数字の29日。
夕凪はねえ
わりと
ばりばりだった!
大掃除の休憩時間に遊んだオセロで
星花ちゃんと一勝一敗で引き分けたし
おせちの味見もしたなあ。
掃除はあまり進まなかったけど
まあなんとかなるでしょ。
あのねえ
夕凪たちはもともと19人姉妹で
踊ったり歌ったり転んだりしていたんだけど
なんとなく足りないような
どうしてもなくっちゃいけない何かが
そのうちやってきてくれるような
今から思えば
そんな予感はしていた気もするんだよね!
ヒカルお姉ちゃんもそう言ってる。
氷柱お姉ちゃんもそうだったみたいって海晴お姉ちゃんも言ってる。
あーちゃんもたぶん何かを求めて元気にはいはいをして
お腹をすかせて泣いている。
そうか!
我が家にはずっとお兄ちゃんがいなかったのか!
夕凪、知らなかったなあ。
弟や妹ならともかく
実は、お兄ちゃんもあとからおうちに来てくれるものだったとは。
そうして、途中みたいな数字の19人は
みごと20人きょうだいになりました。
だから今日の大掃除が
それなりの進み方だったのは
きりのいい30日を待っていたからに違いない。
お兄ちゃんが手伝ってくれる
12月30日。
お兄ちゃんが一緒に遊んでくれる
12月30日。
そのあと一緒に新年を迎える31日。
わあっ!
ラクルな数字。
だって、いかにも月末らしい感じのある31日!
なんだからちょっと今日ははかどらなくても
明日と明後日は
ちょっとうまくいくに違いない!
数字のマジックで教えてくれる未来でしょ。
そんなことを氷柱お姉ちゃんに教えてあげたら
なぜか怒られた!
前から別にお兄ちゃんなんか欲しくなかったし
お兄ちゃんのことなんか待ってなかったし
ただ、あまりに情けなくて放っておけないから
いるだけなら別にかまわないから仕方なくいさせてあげてるだけだって。
それと、31日も別に特別な数字でもないんじゃないかなあって。
ねえ!
お兄ちゃんはどう思う?
夕凪の味方してくれるでしょ?
だからこれからすぐに、夕凪がなんとなくお兄ちゃんのことを待っていたんだと認めて、
夕凪は今年もお兄ちゃんが一年ずっとそばにいてうれしいとわかってくれて、
あと二日も必ず盛りだくさんになるから
大掃除なんかしている暇もないほどこの冬休みはお兄ちゃんとしたいことばっかりだって
ちゃんと素直になって、
ぜんぶ夕凪の言うとおり!
だと、みんなにも伝わるように大声で宣言してね、おねがい!
30日と31日の不思議なマジックは
後でもいいや。
もっと大事な約束をしなきゃ。
じゃ、明日もお兄ちゃんには
ひたすら追い掛け回す夕凪がいるから
忘れないでかまってね。
冬休みって楽しいねえ!