氷柱

『間違い探し』
浮かれ騒いでいる季節はまだ続く。
みんながクリスマス気分で
サンタクロースからのプレゼントと
宿木の下のキスを待っている。
私は違うけどね。
そう、
私がしっかりしなくては!
と思うの。
だけど見回すと
風は冷たい、
たちの悪い風邪ははやる、
真剣にうがい手洗いをしている姿を見かけるわ。
現実はなかなか大変なものね。
サンタにお願いするプレゼントも
二人だけの時間だけは、
とりあえず頼んではみるものの……みたいな感じで
真面目に考え出すとかないそうにない願いのほうが多くなってきて
雰囲気が明るいわりには
節度は保っている模様。
こういうの
小さい子の成長を実感するというのかしらね。
今年は別に、私のすることはないみたい。
ま、いいんじゃないの。
誰かがやらなければいけなかったから
仕方なく私が憎まれ役になって口うるさくしていただけで
することがなくなっても
ちびっこたちが練習中のケーキがうまくいかないから
へこんだスポンジを一緒に眺めて
同じ気持ちになって悲しい声を出してあげたりする仕事があるの。
あの子達のモチベーション的には重要みたいだから。
ちょっと焦げすぎたお料理をいつもおいしいって食べてくれる人はもういるんだから
私のすることはそれでいいのよ。
ああ忙しい。
こんな時にさらにお役目が増えたりしたら
誰より一番真っ先にダウンするのは
見張り役の意地悪で口うるさいお姉さん。
誰も叱らないですむこのごろは
気持ちも楽に過ごせるというもの。
蛍ちゃんはね、
最近余裕のある私のことを
少しはやることがあったほうが気が楽なんじゃないの
なんて変な心配をするけど
とんでもない。
楽ならそれでかまわないのよ。
どうせ子供が多いこの家では平穏な日々は長く続かない。
私以外のどこかで必ず騒ぎがあって
どうせ落ち着かせるために
かしこくてできる人が首を突っ込んでいかなければいけないんだから。
私は、今のうちに貴重な時間を堪能しておくことにするわ。
まあ私だけは間違いなく
トラブルの原因になったりなんてするわけがないわね。
いちばんしっかりしているほうだから。
えっ?
ちょっと声の調子が悪いんじゃないかって?
うーん、きのうはあまりに読書がはかどりすぎて
夜更かしをしすぎたかもしれない。
ただそれだけ。
決して気が緩んで
自己管理もできずに
まわりの手を煩わせるなんて
そんなこと
ないない
絶対ない
あってはならない。
それだけは。
それとも、私が寝込んだら
つきっきりでお世話をしてくれる人がいて
少しの間だけでも二人きりなんて──
現実を知れば
決して叶うわけがないし
最初から願ってもいない。
試しに一度
風邪のふりでもしてみたら
証明できるの。
一瞬だけでもいいから
ただ二人だけでいられたらと
そんなこと、願ってもしかたないって。
そのうち私の能力が必要になる場面があると思って
たった今、することがないなら
別に──
何かのふりもしない。
試してみたりもしない。
私は誰にも迷惑なんてかけない。
それでいいの!