綿雪

『春はまだ遠く』
そわそわする冬休みをまもなく迎えて
良い子たちのクリスマスがやってきて
晦日にみんなで紅白歌合戦を見たら
そのあとはもう
初春のよろこび!
まいにちのこんなに寒い日々も
もうすぐ暖かくなるのでしょうか?
でも、まだ夜の長い冬至もやってきていないよ?
観月ちゃんとお話をしていたら
冬至の後は
小寒が来て
そしてついに、一年で最も寒い頃と昔から呼ばれる大寒が来て
そのあとにとうとう
春のはじまりの立春が来るの。
むかしの暦では
一年のはじまりは立春の頃。
白い霜の地面を貫いて芽が吹き始め
溶けかけた雪が残る枝に梅の花がほころぶころ──
にも、まだ早い気がするね。
やはり昔の人たちも
あわててしまうほど
指折り数えるようにして春を心待ちにしていたんですね。
だからユキたちがもうすぐの気がしているお正月は
春とはいうけどまだ春ではない
大変な寒さが続くということになります。
きをつけましょう!
うーん、まだまだ厚着の季節は続きますね。
タンスの靴下のたなもだいぶもこもこ。
手袋もマフラーも寄り添って出番を待っている。
これからです。
そんな冬を少しでも明るく過ごすために
華やかなお正月や
クリスマスがみんなのもとへと来てくれるのかもしれません。
寒がりで
あわてんぼうで
まだ小さい子たち。
みんなのところに
夜空のてっぺんにきれいな星が
祝福に輝いた夜が
今年も
愛する人と過ごす喜びのためにと。
ユキにも今年またそんな夜が来る、
だったらいいですね。
エス様の生まれたときには
贈り物に三人の賢者が
乳香と没薬と黄金をささげたといいます。
乳香は今で言う香水のような役目をするもの。
没薬は焚いて香にするもの。
黄金はあのぴかぴかまぶしいもの。
光が当たるときらきらするそうです。
ユキのまわりには
まだ、ひとつもないものばかりですね。
だけどイエス様がいただいたいちばん大切なものは
同じようにユキのところにも毎年のように届き
お空のてっぺんに同じように星が輝かなくとも
やがて誰もが知るとくべつなお話になって伝わることもないとしても
今年もまた
きっと──
世界で一番の幸福とともにユキのおうちにもあるのだと思います。
そうしてなんとか
冬を越して
楽しい思い出や、厳しい寒さの名残りを抱えて
強く芽を出すように
春を迎えられたら、
という祈り。
みんなと──
お兄ちゃんと
一緒に願うことができたらいいですね。
今はまだ
暖かい日差しの下、厚い服を下ろして
一枚ぶんだけ身軽になるのを
遠く夢見る時間でしかなくても。