『やってしまった』
ああ──
ついに
やはり
どうしても
そうなってしまうの。
人間らしい意思で避けられるものなら
避けたかった。
でも、なんとなく
すでに予感があった。
逃げられないと……
この時期。
はたして良い子にしていたかどうか
一年を思い返すと
どちらかというと運命の天秤が
悪い子のほうに傾いている
そんな自覚がある場合
ここに来て、足りない分の善行を取り戻すために
自分からお手伝いを申し出たり
困っていそうな顔を見つけて助けに行ったり
子供だったらしてみるの。
神様は
ぜんぶ、ちゃんと見ているって
信じているから。
この年になればわかるけど
というか、私だって少し前から
もしかしたらとは思っていたけれど
神様はそんなに公平ではなく
まあ、公平かもしれないけれど子供の視点からは見えにくくて
単純に機械的に正しさと比例して
サンタさんからよいプレゼントが届くということもないので
まあ、気休めね。
クリスマス前の良い子アピールの追い込みというのは。
意味がないと知っているから
別に今年は意識なんてしないと思っていた。
春風姉さまや蛍姉さまが言う
お姉ちゃんの趣味に付き合ってくれたら
サンタさんから見てもプラスになるかも。
という甘い言葉には
もう二度と乗らないはずだった。
ドレスとか……
仮装とか……
野菜の皮むきとか
クッキーの量産とか。
そう、クリスマスらしいクッキーの形は
型抜きでできるものばかりとは限らない。
クリスマスらしい服は
実用性があるものばかりとは限らない。
言うことを聞く必要なんて
どこにもないとわかっているのに。
なんかつい……
そこまで言うなら、って折れてしまう。
危うい均衡を保っている天秤のせいなのよね。
たぶんね。
今年、言い付かった使命は
話を聞いたときは
それくらいならいいか、と思ったものだけど
良く考えたら
パーティーに使うかもしれないからなぞなぞをたくさん用意しておいてね、
というのは
姉さまたちからのお下がりの本からでは
知っているなぞなぞしか出せない。
図書館で調べても
面白いのを選ぼうとするとそう多くないことに
やがて気がつくの。
世の中にあふれるなぞなぞの海には
独創性のある優れたなぞなぞばかり
見つかるものではないのだと。
けど、小さい子が多いから
簡単でいいみたいね。
かといって、すぐに答えが出てしまわない
ほどよいむずかしさ。
別に、私のなぞなぞが
たったひとつの大事な出し物でもないとはいえ──
ありきたりなものばかりなんて選べないわ。
スマートな頭の柔らかい発想を自然に引き出せるように。
引き受けたからには
逃げるなんてできない。
私たちのクリスマスパーティー
食べられないパンは
カビの生えたパンとか
落としてしまったパンとか
そんな悲しい回答は出てこない
きっと暖かい雰囲気になるといいわね。