夕凪

かぐや姫
ふるいむかしのそのむかし。
月から来たかぐや姫のおはなし。
神秘的なお姫様と
宝を巡るおもしろい物語と
少し悲しいお別れ。
あれってさ
いいなあー
女の子の憧れだなあ
夕凪でもそう思うんだからよっぽどだなあ
誰でも一度は
雰囲気にひたってみて
自分だったらなんて想像するものなのかなあ
儚かったりしっとりしちゃう
って気はするんだけど
よく考えたらあんまり参考にならないよね。
ありえないくらい美人だし
竹がぴかぴか光ってるし
もてもてだし
月に帰っちゃうし。
だいたい竹って細すぎじゃない?
よく入ろうなんて考えたなあ。
あーちゃんでも入らないよねえ。
あーちゃんはいい感じのすきまも好きだから入ってみようとするかもしれないけど。
まあ、すぐ出てきちゃうけど。
おちびだったのが大きくなったなんて
びっくりするほどすくすく育ったなあ
かぐや姫
小さくてもぜんぜん好き嫌いしなかったんだろうね。
そんなふうにしたら
美人に育つんだねえ……
むりむり!
そもそも
求婚者がたーくさんなんて
子供の頃の想像とは違って
今になったらわかるけど
普通どこにもそんなことないよねえ。
あったら困るし。
うーむ
なれないなら
他のを作るか。
なんかいいやつを。
ゆうな姫。
むかしむかし
玉のような元気な赤ちゃんが生まれ
生まれたところから離れるのは寂しいから……
竹にも入らないで
まあいろいろあって
求婚者が集まるわけでもないのでふつうにしていたら
とつぜん本当の家族がいたとわかって
たくさんのきょうだいに出会って
わいわい言いながら
けんかもしつつ仲良く暮らしました。
おうちに帰ってきたから
おしまい。
どこかで
聞いた話のような?
まあいいや。
そうそう!
離れ離れになっちゃうけど
学校には行かないとでしょ?
お友達と遊びに公園にも行くんだし
だからゆうな姫は
月から地上に行くかわりに
歩いて出かけて
寂しいなって思ったら
学校が終わった後で
歩いて帰ってくるね。
おみやげに
不死身のお薬を残していかないけれど
富士山の上まで行くこともまあそんなにないから
別にいいの。
今だと
そんなところでごみを燃やしたらだめだもんね!
ごみじゃないな……
というか夕凪だったら
お兄ちゃんにあげたい食べ物
焼きすぎて、焦げちゃっても
何回でもうまくいくまで作るしさ!
不死身のお薬って別に食べ物でもないか……
あれなんなの?
どうやったってみやびな展開にはあんまりならないけれど
お兄ちゃんといられるおうちに
いつでも帰ってきて
くつを蹴飛ばしておやつを探しながら
いい子でただいまが言える元気な夕凪。
たまになんか珍しいことがあったときとか
わけもなくぴかぴか光りながら帰ってきても
お兄ちゃんが待っていてくれなかったら寂しい夕凪だから
仲良くしてあげてね!