綿雪

ドライフラワー
お庭の花がいつもぴかぴか
きらきらしていた季節。
暑さにぐったりうなだれても
水をあげれば丸くなった光の粒が散りばめられて
いつも見ている人に元気をくれた夏の日々でした。
大きな歓声も
つられて開く笑顔も
いつのまにかなくなりそうな今では
小さな花を小雨お姉ちゃんが集めて
これから寒くなって閉じこもりがちなお部屋にいっぱい敷き詰めるため
お花の形を残す
ドライフラワー作りがはじまっているの。
乾かして
固めて
かざります。
ひとつひとつの白い花。
まだもう少し寒くならないと
虫がついてしまって小雨お姉ちゃんはちょっと苦手なんですって。
こんなにすごい
りっぱな技を持っているのに
なんだかかわいい小雨お姉ちゃん。
みんなのお部屋がきらきら真っ白に輝くのは
まだまだ先のお楽しみ。
雪が降るより
もっと早いかもしれないですね。
でも、ユキも手伝いたいけど
乱暴に触ると花びらが取れてしまってかわいそうなの……
今年は小雨お姉ちゃんが一人でゆっくり続けるのだそうです。
ユキのお部屋にたくさんもらえるまで
だいぶ──
かかりそう?
冬のもう少し先になるかしら?
他にもほしい子
いっぱいいるかもしれないね!
小雨お姉ちゃんとお話をして笑っています。
だってすごく寒い日が来て
ぶるぶる震えてしまうと
ひとりで遊ぶのも心細いし
みんな大好きなお兄ちゃんやお姉ちゃんに甘えてかまってもらうしか
することがないんですもの。
取り合いっこになったら
ゆずってあげたりもしなくっちゃ。
大好きな人がいてほしくて
だけど離れずに一緒にいるなんてことができない
暗くて寂しいお部屋の景色に
一輪だけでもかわいい花が咲いていたらって思うの。
こころがなごんだり
笑顔が戻ったり
小さな元気がわいてきたり
できるかもしれません。
白くて心細そうで
まだまだみんなのお部屋には届かないつくりたて。
しばらくは小雨お姉ちゃんのお部屋でやさしくお世話をしてもらう子たちなの。
ひなたにいっぽん
飾られたら
今日の陽気でたちまち呼吸をはじめるように
ぽっと熱を持って
ユキの手の中で
やわらかく震えている小さなぬくもり。
こんなにほのかだけれど
あまりきれいだから
言葉もないのに何かを伝えようとしている気がして
見つめ合っています。
さみしいの?
かなしい?
それともひらいて咲けて
こんなに力いっぱいに花びらを広げられたら
やっぱりうれしいのかな。
もっと気持ちが伝わるならいいのだけど
ユキはちっとも小雨お姉ちゃんみたいに器用ではないから
見つめるだけです。
あの……
むずかしくてたいへんで
伝えたい気持ちでいっぱいでも
言葉にできないことは
誰にでもあるのでしょうか。
丸くてきれいなのは
センニチコウっていうんだって。
赤や紫の種類もあるそうなの。
どんどんお友達ができたらいいね。
そうしたらユキもなんだかうれしくなる気がするの。