海晴

『問題なし』
お天気お姉さんのお仕事が
にこにこしているだけだと思っているのかも?
麗ちゃんは
たまに失敬なことを言うよね!
ちゃんと私だって
最高の笑顔はいちばん好きな家族のみんなに
とっておいてあげているんだから。
あ、お天気お姉さんの話じゃなくなってきてる。
しかも別にわざと家族のためだって用意しておくわけじゃなくて
自然とそうなってしまって
霙ちゃんにからかわれることにもなったり。
仲がよくて何が悪いの、ぷんぷん。
そんな愛する家族の
今日もかわいいところ。
そうねー、今日は
なんだかんだやっぱり暑い中の作業で
太陽のばかやろう的な青春っぽい発言が特に青春でもなく
普通にそのままの意味で出てきてしまうはしたなさもありつつも
ちゃんとおのおの自分の好きな帽子を用意して暑さから体を守りつつ
熱中症の怖さも考慮して水分とナトリウムの補給をして休憩も取り、
困った虫刺されでかゆくならないよう、軍手と薄手の長袖でガード。
注意をして見てあげる前から準備もできたおかげで
日が落ちるときまでくじけないで戦い抜いたこと。
えらいえらい。
教えてあげたことをしっかり覚えてくれているんだ──
みんな成長しているのね。
海晴お姉ちゃんみたいになれる日も近いよ!
別に、そんなになりたくないかもしれないけど……
はっ!? いけない、麗ちゃんの暴言で揺らいでしまっている。
暴言はいつものことなんだからこっちが大人になって受け入れてあげなきゃ。
本当はまあ……もうちょっとお姉ちゃんに気を使ってあげてほしいけど……
口の悪さが一朝一夕で改められるわけでもないことは
氷柱ちゃんを見ていてよくわかっているし、
それにしても氷柱ちゃんも外面を取り繕うことは生意気にもそれなりになってきたな……
この前たまたま学校の先生にお会いする機会があったから
氷柱ちゃんのお行儀の良さをうかがって
こちらとしてはなんとも複雑な笑顔を浮かべるしかなかったというか
まあ、意地っ張りばかりでもなくなったのはいいことだと考えよう。
愛想が良くて損をすることもないし
女の子は明るい笑顔が一番かわいいし。
麗ちゃんはなかなかそんな器用なことはできそうにないけど
ちょっとくらい口が悪くて言葉がとがってちくちくしていたって
私が麗ちゃんを嫌いになるなんてことは絶対にないんだし。
ひとつ不満があるとしたら
凛とした妥協ができない性格のおかげで
たまに今日みたいにかっこよく草むしり隊のリーダーができたら
こんなふうにいっぱい褒めてあげられるときなんてめったにないのに
照れてすぐ逃げちゃうところ。
もう……
ものたりないー!
どれだけ好きなのかって伝えるのも努力や経験や、たまに勢いが大事で
なかなかうまくいかなくて大変なものだけど。
それをいっぱい受け取ってくれているキミだって
私がことあるごとにいつでも愛してるって伝えたいことは知っているかもしれないけど。
本当はまだ足りない気がしているんだよ。
でも、素敵な子だからたくさんうれしいことがあるはずのときに
それを受け入れるのだって
あんがい日々の積み重ねが必要なのかもしれないね。
麗ちゃんが本当にみんなからもらえるはずのものは
形がなくて、表現する言葉も今はないかもしれないけれど
私たちがいつでも惜しみなくあげたいと思っている何かよくわからない目に見えないもの。
ちゃんと受け取ってもらえるようになるのはいつのことか?
たまには素直になってくれたら
きっと喜んでもらえるはずじゃないかって、
喜んでもらえたらいいなあって願っているのにね。
そのためにはまあ
ちょっと麗ちゃんがいい子になったと自覚してもらうために
言葉使いを少し気にしてもらうのはいいかしら?
ちょっとめまいがしそうな回り道だけど。
でも、回り道しかできない子だとしても
私の大切な人なんだから。
まあ
大体は慣れじゃないかな!
たぶんね!
いつも真剣で
きりっとした美人と言うだけじゃなくて、本当は気持ちこそが清冽な麗ちゃんは
とってもいいお兄ちゃんと、いいお姉ちゃんに囲まれた
これから必ず幸せになっていく力のあるかわいい子。
お姉ちゃんは
ちょっと手助けをしてあげたいだけなの。
今は少しくらい照れ屋で、素直じゃなくてもかまわない。
そんなことくらいで麗ちゃんの良さが失われることなんてないってちゃんと知っているわ。
だからたまには
腕の中に抱きしめて
どんなにいい子かわかってほしいのに
そういうときだけは機敏に抜け出していくんだから。
あの逃げ足は
運動方面でも隠れた意外な才能があるかもしれないわね!
ううん……でも普段の不器用さを見ているとそれはさすがにないような気もする……
ねえ、どう思う?
私はいつも突拍子がないことをしがちな、ふとしたときに成長を感じる
麗ちゃんやキミや
元気なみんなを見ているのが楽しくて仕方がないんだけどな!