『麗しの』
久しぶりに迎える連休だというのに雨が近づいている。
ここは前向きに
春風が思い立っての急な洗濯に巻き込まれないで
心穏やかに過ごせると考えるべきだろう。
洗濯は確かに大事なことだけど……
そればっかりでも疲れるものだ。
いつも家事に追われている子たちにささやかな休息の贈り物──
そんなのもいいんじゃないかな。
もちろん私も特別な予定を入れず何事もない日を過ごす。
日頃から大変なのだから
ゆっくり手足を伸ばして横たわろう。
ぐでーっとして
たまに伸びをする。
雨だからすることがないという言い訳で
何の変哲もない時間を。
愛すべき平凡な日常。
明日はまだ天気が持つらしい……
それでも外に出て行きたいという声はあるが。
考えてみれば、なるべく雨に頼らなければ
なんでもない普通の過ごし方をしていられないというのは
自分の行動を無意識からの枷に制限されているのではないかな。
やがて宇宙の塵になる時を迎える私たちは
今は広がり続ける世界に行く先を知らず戸惑う一人の若者でもある。
何かと用事に追われがちな時
意識した上で何もしないことを確固たる意思で選び
何もためらうことなく
一切の後悔はしないと決めた上で
ごろごろする。
書棚のほこりっぽい部分を指でなぞり
気分次第で本を広げて
急いで読み進めるのでもなく
まどろみながら。
今年は災害のニュースが続き
大雨も人を悲しませ
私たちはたまに、こうして穏やかに過ごせるということも忘れてしまう。
宇宙の中のちっぽけな私たちには
わずかにできることも、そして多くのできないこともあるのが当たり前だということを
ついうっかり
どこかに置いて……
悲しみも、みんなといる日常も全て私の一部なのに
そのうちのひとつを見えない場所へ落としてしまうと
やっぱりバランスが悪いから。
たまには天気が悪いせいにして
なくしそうにしているものを取り戻してもいいのだ。
と、その場の気分で過ごして
空いた時間に災害時の備蓄を調べようとパントリーに向かったところを
春風に見つかると
なぜかつまみ食いをしようとしていると勘違いされて
苦労して説明した後で
暇そうだからと廊下の掃除を頼まれてしまう。
こんなつもりではなかったのに
どうも何事もなく普通に過ごすというのは難しいものだな。
ほんの数分前までは未来は無限の広がりを持つような気がしていたのに
いつのまにか大きな唸りに巻き込まれているのだ。
宇宙のどこでも絶え間なくぶつかり合う
ほんの小さな素粒子たちの動きのせいかもしれない。
なんとも得がたい安らかな自由をますます愛おしく思うばかりだ。
望むままを得られないのもまた素晴らしき時間か。
日々のしがらみから解き放たれるには
まだまだ私も幼くて、降り注ぐ愛の元に育つ
未熟で小さな宇宙のかけらでしかないのだな。