氷柱

『あやしい』
晴れていてもとつぜん
前触れもなくひんやりとした冷たい風が吹き
山の端から広がっていく厚い灰色の雲。
台風の影響がだんだん迫ってくるのを肌で感じる
夏から秋にかけての今ぐらいの天気は
ささいな変化がたちまちのうちに
急な大雨を呼ぶので。
庭ではしゃいでいた青空や虹子たちが
まだもう少しっておねだりをしても
たとえ、曇り空がすぐに晴れてしまい
結局はおうちに急いで戻った意味もなく
慌てて損したって思うときがたまにあっても
外に出ている子を放っておくことはできないから
脇に抱えたりおんぶしたり肉体を全開で使ってでも連れ戻さなきゃ。
ずぶぬれのびたびたで帰ってきたら
くしゃみばっかりで困るのはあなたたちのほうなのよって。
それにしても天気予報って
ぜんぜん当てにならないわね。
雨が降ると思って身構えていたらかーんと晴れて
今日は大丈夫かと油断しているところにぽつぽつやって来るの。
予報はまあ、先のことは人間にはわからないとしても
天気というやつがまったく信用できないのは
もう日頃の積み重ねの問題ね。
こっちにも都合があるのに
人のことも考えず裏切るのを繰り返すから
雨が降りそうで家に戻って暇になった子の遊び相手もすることになるわけで。
それなら早くから言ってくれれば準備もできるのにね。
こういうときに限っていつものお気に入りの絵本は飽きたって見向きもしない。
私だってわかっていれば
本棚の奥や押入れから良さそうな本を探しておいたりするのに。
なぜか下僕は姿を消して
また遊びほうけているのね!
お天気もだけど、はっきりしない男もあんまり信用されないわ。
誘われるままにどこへでもついていくみたい。
ふらふらしていないで
たまにはもっと……
今だけはどうしても
普段からがんばっている氷柱が困っているときに手助けをしたいから。
急いで駆けつけて
そうなったら虹子たちも感心して
仲がいいんだね!
みたいなね。
何を言ってるのよ!
この子ったらほんとにもう。
ねえ?
と、いったような。
まあ、今日のところはそう言われていたのは蛍ちゃんだったけどね。
暇なようで何かと用事もあってばたばたしていた休日の二日間もおしまい。
明日からは普通の日々。
こういうなんでもないときにしっかりしている姿を重ねていくのが
信頼への第一歩よ。
ほらほら、そろそろ信頼と実績を重ねた氷柱ちゃんに
いつもお疲れ様とか
他にもいろいろ、かけてあげる言葉を思いつくころでしょう?