『大漁』
はだしで廊下を歩いているといろいろ転がっているのはよくあることだけど
今日は間違えて踏んでしまうものではなく
明らかに一目でわかる山のような、というか
山にして積んでおいたら限界を迎えて崩れたような
かなり無茶がある量の毛布の山。
何があったんだろう?
大掃除?
早くも秋の衣替えの準備かな?
まだ厳しい暑さは続きそうなのに
気が早い子がいるのだろうか。
うーん、でもそろそろ夏休みも終わりが見えてきて
後回しにした宿題もいよいよ放っておけないらしい姿もちらほら。
今のうちにしかできないことといえば
誘われている部活動に顔を出すことや
学校が始まるとなかなか時間が合わないかもしれないから
きょうだいの誰かをそのへんにいる目に付いた顔をすぐ誘って走りに行くとか
もう今年は機会がないかもしれないと思うと
ずっとタンスの中で待っていたちょっと前のシャツに着替えたり
桃を手でむいてみたり
アイスに添えてみたり
風鈴の下に座って
長く影が伸びる庭を眺めてみたり
そうしたらアイスが溶けていたりなんてことを
この夏最後かもしれないと毎日繰り返しながら
時間をもてあましているようで
豪勢な過ごし方みたいでもありつつ
それでもなんとなくお手伝いすることを探してうろうろして
なんだかんだで体を使うこともあったり
お風呂のあとには眠くなってチビたちと同じようなあくびをしている
どこにでもある夏休み。
そのわりと健康的で健全で
少し退屈もして
たぶん、あとになったら懐かしくなりそうないつもの夏休み。
そのまっただなか。
の、後半戦もそろそろ意識する時期。
暇があるときにしかできないなら
毛布が散らばっていても
特におかしくはないのかな。
少しの問題なんて
夏もそろそろ終わりだし、で片付きそうな頃合いだから
まあ散らかした子はもういないみたいだし
その日の夕方は
少しの暇を自覚した娘が一人
風通しのいい廊下にぺったりおしりをつけて
毛布を一枚
また一枚
たくさんの数もわからずかかる時間も考えないまま
畳んで山に積みながら
想像通りかなりの高さに膨らんでも
また崩れるかもしれないとちらっと浮かぶ思いを
まあいいかって
ただ一言で済ませてしまって
やっているうちに面白がってしまう理由もたぶん
夏休みももう終わるから。
今日も暇になるまであとちょっとの瀬戸際を歩く
なんてことのない、ふつうで早く眠くなりそうな日。