海晴

『準備開始』
楽しい夏休みがはじまって
家中エネルギーで溢れている生活。
もう8月になるとそろそろ落ち着いたかな、
と思っていたところに
旅行の準備があって忙しくなってくるのだから
夏というのは油断ができない季節だわ。
こんなふうにうやむやに
心を奪われて
そのまま二人が永遠を過ごす隠れ家へと向かう夏なのね。
っていうか、キミとすごすそんな家は
いつもみんながいるここなんだけれども
それをひとときママの実家にするということに頭を切り替えて
まあ、いい思い出ができて帰ってくることができたらいいね!
私がいくら年長だからといっても
みんなを心配して目配りを欠かさず
無事に帰ってくることだけが旅行の目的、
というのであれば
麗ちゃんみたいに準備の最中もつまらなそうな顔になってしまう。
ここはひとつ、せっかく引き受けてくれるというんだし
大変そうなことはいくつか麗ちゃんにも背負ってもらうことに決めて
私は旅行も楽しく
いろいろ持っていくものが多くて大変な準備期間も
せっかくだから楽しめるように。
今しか訪れないこの体験。
挑戦していかなくっちゃ!
というわけで
いちばん楽しいことがあるとしたら
いつも近くにいてほしいやっぱり大好きな人と一緒が
一番ということになるな。
ちらり。
お買い物に行くときも
今年の水着を選ぶときも
少し疲れてひとやすみのときだって
いつも離さないで
近くにいるか確認するために呼んでいる。
あれっ!?
これはもしかして
すでにはじまった燃えるような恋──というか
怖い話を聞いて音入れにもお兄ちゃんについて来てもらいたくて
ドアの向こうにちゃんと待ってくれているか何度も声をかけて確認している
立夏ちゃんみたいなお兄ちゃんに甘えている小さい妹では?
わあっ!
だいぶ年上でこんなに素直に甘えられない運命を受け入れていたのに
いつのまにか自然にキミはたくましく
私を包んでくれていたなんて
そんなことに気付くのも
普段と違う経験をする旅行の楽しみね!
まだ出かけてもいないけど!
というわけで
今年の旅行は大磯、
ママが青春時代を過ごした過ごした
いわば私たち家族のルーツになる場所への里帰りでもあるわね。
実際はそういうことはあんまり気にせず
海が近い場所で過ごすことになるからみんなおおはしゃぎ。
今年こそためらわないで
大胆な水着を選ばなければ、
いよいよその時が近づいてきたわけです。
出発は10日だから、それまでにはちゃんと荷物をそろえて
忘れ物があっても取りには戻れないぞ!
いちばん大事な荷物は
しっかり私が手をつないで
ずっと離さずにつかまえてあげるから
あわただしい旅の朝でも
おいていかれる心配だけはしなくていいよ。