『雨あがり』
昨日までは、少し雨が降っても湿度が上がるだけで
涼しくなることはなかったのに
やっぱり雷が窓を揺らすような豪雨が通り過ぎた夜は
肌寒さも感じるもの。
雷で泣き出した後で
雨の音が収まったらけろりとした顔で
むしろ刺激が足りないみたいで夏らしく怖い話までして
なんだかずっとぶるぶる震えていたような小さい子供たちも
朝から夢中で遊びまわってお疲れみたいで今は夢の中。
布団をはだけてしまったらいけない気温だから
ちょっと部屋をのぞいて、なおしていたら
さっきまで眠れないって泣いていたのはなんだったのかというくらい
怖いものも何にも知らないような寝顔。
まったく、小さい子の言葉なんて本気にするものじゃない。
おそうめんにゆずの酸味で変化を付けてみたら
今日はあったかい麺がいいってはしゃぎだして
暗い廊下に漏れる光のひとつは
真剣に調べて明日からの献立を考える蛍姉さまの顔。
そこまですることないと思うけど。
今度は夏だからさっぱりしたものがいいってさわぐのがいつものことだし。
さわぐというか
なぜか歌いだすというのだろうか。
蛍姉さまにも、無理をしないようにって声をかけて
部屋に戻ってみたら
誰よりいちばん真夏の夜らしい
布団を放り出して脳天気な顔で眠っているのは
私たちのすぐそばのお姉さんだったという話。
年のわりには子供っぽいところがあって
何かよくわからないことで喜んでは子供たちと踊っているようなあなたも
今ごろはおなかを出して眠っているのだろうかと想像すると
怖い話ではそんなに震えていなかったみたいだけど
おそうめんはかなりもりもり入っていったようだったから
やはり無邪気な顔で眠っているのだろうか。
寝苦しいのか、珍しい涼しさに戸惑うだけなのかどちらとも言えない
不思議と寝付けない夜。
今年の旅行先はママの実家の大磯になる予定なんだって。
やはりそのときも慣れない環境で眠れなくなり
みんなの安心したような寝顔をのぞきこみながら
一人、布団をかけ直して回ることになるのだろうか。
どんな無防備な顔で眠っているかがわかる夏の夜。
いろいろな出来事が変わっていく旅行先。
だけど、無事に戻って安心できたら
それだけで私が望むものは特にないわ。
電車で少し離れたところも見て回ろうという話は出ているけれど
わりと行き当たりばったりの人たちだからどうなることか。
きっと希望なんてそんなにたくさん叶えられないものだから。
あんまり期待しないようにしながら
落ち着いて静かに
眠れない夜を過ごすの。