海晴

『約束』
気がつくと
朝も昼もいつも
すぐ隣には見慣れた顔。
当たり前に愛する人がいる景色が
なぜか今、当たり前ではない。
離れずに
変わらぬ顔がそばにいる。
そのわけは
ついに永遠の約束を交わした二人がいるから、ではなくて
このあいだから小中高そろって私の家族たちの学校で
みんなが待っていた夏休みがはじまったから、
なのでした。
しっとり夏の朝もやの中
生まれたての朝日と共に
はしゃいだ声が降り注ぐラジオ体操ではじまる毎日。
もう何日か過ぎたけれど
朝起きてからお昼寝を経てずーっと
夜にお風呂に入れて寝かしつけてもさらに夢の中まで
いつもの同じ家族が大騒ぎをしている。
まあ、この環境も新鮮なものだなあとか思ってもみるけれど
あんまり毎日続くものだから
ちょっとはこう
きのうとは違う顔の出会いが会ってもいいような?
とか言ってると
ちびすけたちがほほをぐねぐねびろーんってにらめっこしていて
そういうのを期待していたわけでは!?
と、わらっている。
なぜ──
横からにらめっこにわりこんで
勝手に負けて立ち去っていくのか?
小さい子たちにはわからないに違いない。
まあいいか、それで。
みんなは目の前の戦いに一生懸命。
ぐしゃぐしゃ笑ってほしくて仕方ないのだから。
まぶしい夏の暑さのもとでも
それが弾けるバイタリティってやつね。
なのだから
そろそろ代わり映えのない夏休みの日々に退屈をはじめた
お姉ちゃんのことなんて
なんにも知らず
特に気にもせず
ほうったらかしで
新しい発見だらけの毎日に飛び込んでいくんだわ!
まったく
なかなかみんなに梅雨明け宣言ができなくてつまらないからって
私までうじうじしている理由なんてないわね!
それを教えてくれた偉大な先生たちのもとへ
並べたグラスの炭酸に氷を浮かべ
お盆を手に戻ってみたら
さっきまでの騒ぎがなんだったかというように
暑さでぐでーってしていたという。
なんだったのか
私が学んだことは!
まあいいか。
とにかくそんなこんなで
世間も家の中もすっかり夏休みよ。
ちょっと油断していたらぱーっと過ぎていくことで有名な
あの夏休み!
学生時代の甘く切ない思い出。
輝ける夏休みです!
ちゃんと一日の計画を立てていないと
だらだらしていたらどうなってしまうことか
考えるだけで恐ろしい……
せっかくの夏休みを楽しむための
今がまさに分岐点。
はじまりの日々。
そのへんから顔を出していつも当たり前に隣にいるからって
みんなが一緒にいてほしいと思っていることを忘れて
まったりセミの声を聞いているうちにだらだら毎日を過ごしてしまう可能性もあるなんて
そんな夏休みを迎えるわけには行かないでしょう!?
そうよね!
だからこんなに普通にみんながいる日々にこそ
どんな時よりも愛する人を思い
その瞳を見つめあったり
なにをして遊んで欲しがっているのか考えてみたり
特にすることも思いつかないときは
ただ愛しい思いだけを胸に
寄り添って。
ずっと家族でいられるからうれしいと
伝えたらいいの。
愛していると。
胸がいっぱいでたまらないと。
夢のようだと。
夏休みに感謝して
いつか秋の始まりに、思い残すことなどないのだと
そう言えたら
いいのになあ……
なかなか難しい課題だな?
そんな未来を迎えるには
今が大事なのだから
よろしくね! みたいな話でした。
まる。
どうか私の愛する家族のみんなが
この輝く真夏の日々を楽しく過ごせますように!
お姉ちゃんもこんな夏休みだからこそ
ここぞとばかりにみんなをみつめてはりきっていきたいと思います。