ヒカル

『誤解』
ひところ確かめておこうと思っただけで
特に何も深い意味はないけれど
わざわざ当たり前のことだったら必要ないし
でも勘違いされたら困るから──
わかってるだろう。
私は子供っぽくないと思う。
春風から見たらまだ妹なんだろうなっていうだけ。
うん、それだけ。
じゃあ!
……
ただこんな話で終わってもしかたない。
もうちょっとだけ。
ゴールデンウィークはまだそれぞれが好きなように希望を話している段階。
どこに行くのか
そもそも旅行に行くのかもわからない。
霙姉はこういう混雑しているときこそ
自分と向き合うチャンスで
何かを見つけるのも自分の中。
みんなの中に小宇宙があるんだって。
私にはそんなスケールの大きいものはない気がするけどな?
たまに珍しく考え事をするときも
狭い範囲でぐるぐる回っている感じ。
最初から答えは自分自身が知っている、というのはわかるけれど
私の場合はいつでもわかりやすいところにちょこんと答えが置いてある。
いつも恥ずかしかったり情けなくて目をそむけて見ないようにしているだけ。
でも結局最後には必ずそこに戻っていく。
小さくて価値のありそうなものは何もない心の中。
散らかっているように見えても
ただ大事なものがほんのわずか転がっているにすぎない
あまりにも単純で殺風景な小部屋。
だけど私の全部が詰まっているんだから
愛してあげなくちゃ。
不恰好でもてあましても
他の心と入れ替えるなんてできない。
年が同じでも
家族でも。
たまに部屋の隅に見つかる何かが
オマエの形をしていることもあるというくらい。
胸の中で時々揺れているオマエの顔。
どうやら私にとって相当に気に入って眺め飽きないものらしい。
ポスターにして貼っておくのもいいな。
なんか面白そう。
特に何も考えずに目を上げるといつも視界に入る顔。
写真に撮って貼っておいても
なぜか同じ顔をしている瞬間はまるでなくて
くるくる変わっていく表情。
落ち着かないやつだな!
同じ年なのに!
まるで生まれたときからずっと一緒に育ってきたみたいに
二人はおんなじ一つのものみたいな感じがするのに。
まったく。
私のほうがお姉さんみたいだ。
まあ、だいたいそんなことを考えながらいつも見つめている自分の心の中。
片付いていないけど落ち着く部屋。
見つめていたら気がついた。
そうか、私はゴールデンウィーク
せっかくだから二人きりで
どこか眺めのいい山登りにでも行きたいのかもしれない。
体力が近いのはお前だけだから。
ただ、山は油断できないからな。
天気は変わりやすく
高い標高は寒さが牙をむく。
もしも足をくじいたりしたら
生きては帰れないかもしれない。
そんなときは
私のことは置いてオマエ一人だけでも生き残ってくれ!
みたいなイメージトレーニング。
家族旅行だから無理だけど!
そのうちね。
ああ、もちろん登山でオマエが怪我でもしたら
私はなにがなんでも連れて帰ってくるから。
置いていったりしない。
いつでも。
どんなことがあっても、
当然だろう?
今日はそれだけ!
私の言いたいことは
だいたいわかってもらえたんじゃないかな……
自分でも何だかよくわからなかったけど。
まあいいよね。
なんかわかってくれたような顔をしてくれたから。
この顔!
またふわふわしたわけのわからない夢の中に出てきそうだな。