星花

『願い』
ほんのこの間の
怖い大きな地震の知らせから
ようやく安心できる日常を取り戻しつつある頃だったのに
今度は続けて大きな地震が来て
熊本では大変な被害があったそうです。
一日、おうちでゆっくりしてみんなと遊んでくれるはずだった海晴お姉ちゃんは
これからの激しい雨に注意を呼びかけるテレビのお仕事が必要になったときのため
朝から出かけて行きました。
心が痛む知らせが続いても
これ以上の被害を出してはいけないという思いで
できることを一生懸命しようとしている人がいっぱいいる。
まだぜんぜん新人のお天気お姉さんに出番があるのかわからないけど
いざというときのために情報を把握しておいて
大事なお仕事を任されたときのためなのだそうです。
前から遊ぶ約束をしていたのにごめんねって
おうちに残しておく私たちのことを心配そうにしていたから。
大丈夫、
こっちはお兄ちゃんもみんなもいるんだから
海晴お姉ちゃんのほうこそお仕事で無理をしすぎないでね!
って伝えたけど
安心してもらえたかどうかわからなくて……
最初の地震の驚きのあと
きのうからテレビでも災害対策の話題が続き
万が一、これから自分たちが大変なことになったときに備えて
話をして家の中をけっこう調べて回っていたんだから
海晴お姉ちゃんにしっかりしているところをもっと見てもらえたらよかったですね。
ヒカルお姉ちゃんや星花たちだって
キャッチボールにお絵かきで遊んでばかりじゃなかったんです。
もちろんずっと気を張りっぱなしでもなくて
休憩時間に遊んだり
きのうは遊んでいるほうが長かったりもしたんだけど
やはり実際に起きた地震の被害を知ると
自分たちの身を守るため
今のうちから行動しなければいけない。
食器棚のお皿の下に滑り止めの敷き物をして並べなおしたり
家具が倒れないように固定してある場所も指差し確認。
非常袋の中身の確認も怠ってはいけない。
避難が必要になった時に持ち出しやすいようにまとめてあるか?
怖いことばかり考えたくなくても
小学生の星花だって
おうちではお姉ちゃんなんだから
急にどんな災害が襲ってくるかわからないと思い知った今は
怖がっているだけじゃいけないの。
お兄ちゃんのお部屋は散らかっていませんか?
なんと夕凪ちゃんだって自分で万が一のことを考えて自分でお片付けを始めたの。
その途中で適当に積んだ山に吹雪ちゃんがつまづいたりもしたけれど
とにかく備えをはじめたのは感心です。
今はとても忙しくて大変なはずの海晴お姉ちゃんに
こっちはみんなで協力しているからと安心させてあげたいの。
海晴お姉ちゃんがいなくてちょっと寂しい週末を過ごしている小さい子たちは
きっとかっこよく大事なお知らせで大勢の人の助けになる海晴お姉ちゃんの姿を想像して
わいわいがんばって
それぞれの個性的な工夫で似顔絵を描いているところです。
私たちのところに帰ってきたら
お疲れ様でした、って見せてあげなくちゃ。
あ、でもその前にひとまずゆっくり休んでもらうほうが先かな。
たくさんの被害があって
今、揺れが続く中で不安になっている人たちがいるときに
まだ小さい私たちは何もできなくて。
それでも、これ以上大変なことにならないように
大きな災害の前でちっぽけな力かもしれないけど
応援している人たちがいることを知ってもらえたら
少しでも早く、普通で当たり前で
本当は手に入れることがとても難しいとときどき気がついてしまう
毎日を一生懸命でいられる平穏な生活を取り戻せるようにと
願う人たちがたくさん、
力になりたいと思っていること。
それを支えたい小さな願いがここにあることも
不安なときには信じることが難しいかもしれないけれど
どうか、今だけはそれを信じてもらえたらいいな。
これから当たり前の日々を重ねていくために
少しでも安心してもらって
それで元気でいてくれたらと
遠い街の、私たちと同じように暮らしている人たちが
もう心配しないでもいてほしい気持ちが
さりげなく、気付かれないくらいでもいいので
なんでもない当たり前の日々に続いていく助けになりますように。
今日はそんな小さなことを
願っています。