『若葉』
ある時は神秘を感じさせる白い光景の中、
またある時は突然の春の嵐に巻かれ
ようやく開いた花をうれしげに躍らせていた木々は
もうすぐ訪れる次の段階に向けて
桃色や赤や黄色を散らせた。
そこここに、だんだんと発見できるようになってきた
目にも鮮やかな緑色の葉、
そしてこれから厳しくもまぶしい光を浴びて
すくすくと大きくなる実は
今はまだ弱々しく、頼りなくても
必ず時間をかけてゆっくり育ち
次の世代へとバトンを渡すための使命を果たす。
じっと立ち尽くし
涙をこぼすみたいに
そぼ降る雨に濡れながら。
花の季節はやがて終わる。
でも私たちの見ている景色は
どうやらまだまだしぶといらしくて
はらはらと降り風に舞う花びらを
我が家の小さい子たちが惜しんだとしても
何も表情を変えずに定めを受け入れ
全ての花は散る。
それは何も悲しいことでも、嘆くことでもない。
人の胸には切ない思いがこみ上げても
なにもかもが断ち切られてしまうわけではないのだ。
時を越えてつながっていく
そのために
数え切れない花びらは今日も地に落ちる。
美しいそれらは終わりの時に
無駄なことなど何もなかったと
誇り高く私たちに告げるよう。
この世界に必要のない出来事など
本当は何もありはしない
いつかはそれを私たちも受け入れるときのための先達の背中。
そう、たとえば私が
冬の終わりに暖かくて豊かだった部屋を出ることを惜しむとも
涙を流すのは今だけで
きっとこの胸の痛みが必要だったといつか知るときがあるだろうと自分を慰めて、
まあ……それはいいか。
そんなことより
全てが役目を果たすことを諭し
子供たちがピーマンを残すときに
栄養があるのだ!
と、こんなにわかりやすく伝えても
一口食べて
むうーっ!
やっぱりだめ……
なんて涙目になると
こちらとしてもよくがんばったと褒めてあげたいし
それ以上は何もできることはない。
お残しがあると
蛍が悲しそうな顔をするとしても。
いや、場合によっては
今度こそと不屈の闘志を沸き立たせている姿を見ることもできる。
我が家もまもなく
さわやかな青春の初夏を経て、燃え滾る熱い魂のような夏へと進んでいくに
ふさわしい環境を整えつつあり──
いやまあ蛍はいつでもなかなか心の中はホットであるかもしれないな。
私はクールなほうだからわかってあげられないこともあるけれど
諦めを知らない若者たちを見るのは楽しいものだ。
オマエもたぶんいつだって
心の中はふつふつと燃えているのだろう。
なんといっても
どうやらそんな顔をしているみたいだと
私が面白く感じているのだからな。
うん。
いつも実に面白い顔をしているな。
オマエは。
暇なときとか、気分転換などに眺めると
とても愉快な気分にしてくれる。
弟とは──
不思議な生き物だ。
その元気で、チビたちにきらいなものを食べさせる工夫もしてみるのはどうだ。
なかなかの挑戦し甲斐があると思う。
私は小学生くらいでにんじんを克服したぞ。