星花

『チェリー』
かわいい桜色がひとつ開いて
つぼみがふくらんで
また開いて
見ているうちに
大きく華やかな枝をいっぱいに広げるの。
今年はこれからまた寒さが戻ることもあって
開花がゆっくり進んで
見ごろの満開は今月末ごろから来月はじめあたり、なのだそうです。
春を告げる最初の花が
この街でも咲きはじめたよ。
縮こまっていても
もう暖かくなってきたから
思い切って!
という感じでしょうか。
先頭を行く勇気あるつぼみが
小さいのに
ぱあーって堂々と開くの。
頭の上で揺らめいた色に
私たちが騒いだり笑ったりしていることなんて知らないで
おすましをして咲いています。
春らしい花吹雪の雨までもうすぐなのですね。
ついこのあいだまで雪が降って
思いがけなく白く積もってしまい
わあわあきゃあきゃあ言っていたような気がするのにね。
いえ、まだ寒くなるらしいから厚い上着はちょっとしまえなくて
あっという間に春の訪れ!
ということもないんですけど。
ゆっくりとあたりをカラフルに染めていく春の足音は
今年はのしのし、という響きでしょうか。
のっそのっそ、くらいかな?
三月の若々しいお日様が出る早朝のころなどはまだ寒く
ぱらぱらの雪をがんばって丸めて投げていた時とそう変わらないみたいなのにね。
着々と季節は移る。
おどろきの。
お庭やそのあたりを探してみても
ぽつりぽつりと、ようやく見つかる開きかけのつぼみ。
ほんの少し前、寒かったときには
雪を投げ合うのも得意とそうでなかったりと
やっぱり、小さい子はあんまり器用じゃなくてのんびり丸めている間に
飛んでくる白い玉の気配に、逃げ回ることになったりしたね。
そんな時には
隣で雪を丸めていたお兄ちゃんがなぜか逃げ遅れて
盾になってくれているうちに
じょうずにできた雪玉を褒めてもらえるの。
投げたらすぐばらばらの霧になってしまっても
お兄ちゃんがいつもずっと一緒に遊んでくれるから。
真っ白になって楽しそうなお顔を見て
冷たいのにはしゃいで過ごした冬でした。
小さな手でお兄ちゃんのお顔を調べていた真剣な表情もまだ覚えている。
みんなを守っていた雪まみれのお兄ちゃんが
もうすぐ春らしく一面の桜の花びらに包まれるようになると
そうしたらみんなはまた
すごくびっくりして
いろんなことを言いながら、めずらしい表情で眺めている子がいっぱいになるのかな、
そのとき星花はすぐ近くで見ていて
大きなお兄ちゃんの頭から花びらをきれいにしてあげられるだろうか、
やっぱり面白がっているのかな、
などと考えました。
それまであと少しの間だけど
がんばって手を伸ばしたら近づけるように大きくなれたらと思います。