小雨

『かくれんぼ』
もう一年も前の
ずいぶん昔のような気がするある日のこと
小雨は一つ上の新しい学年になりました。
同じ年のお友達と一つの教室、
家族の妹たちも同じ小学校に通う子がいて
この時期には次の学年に進みます。
今年も三月がやって来て
もうまもなく次の学年がはじまってしまうと
そう気付いたときに
胸は小雨を無視したようになんだかドキドキ
緊張してとまらない。
あっという間に一年が過ぎていってしまったんですね。
こうして何も変わらないような
あんまり物が多くない自分の机を眺めてみると
少し日焼けをした今年の教科書のかげに
小さくなった消しゴムがころがっている。
もちろん一年前にはなかったものたち。
まだ使えるのになくしてしまうお気に入りの文房具も
涙ぐんでさがしているわけじゃないときにこうしてぽんと出てきたりするの。
また会えてよかった。
この時期には、新しい教科書を迎える準備の大掃除をしたな。
強い音が夜中を覆った雨が通り過ぎ
お昼には切れ切れの雲をわずかに残して晴れてくれた土曜日は
まるで新しい準備のための
大掃除のチャンスを用意したみたい。
小雨は急に気がついても
あんまり慌てていろいろなことができないから
手が届くところからコツコツと
のんびり気長に
なるべくなら、新しい学年の始まりの日が来る前に
済ませておきたいところの片付けの
半分くらいは……
いや、さらにその半分くらいはできたらな
と。
そのつもりではりきっています!
春休みがあったり
あと、陽気ののどかさのおかげで
時間がゆっくり流れているみたいに
一年間の思い出に触れたり
ときどき目を閉じて
ぽかぽか陽を浴びていてもいい。
おうちにいるにぎやかなみんなの声も
春になったら、いつもよりのんびりしていて
手で触れてみるとわかりそうな暖かさがある気がします。
触れたりできないから
気分の話なのですけど。
こういう日は
ちびちゃんたちと遊んであげたいと思って
探しにいくと。
ぱたぱた足音を立てて近づき
走って跳ねて追い越していくのは飽きたみたいに小雨をつかまえて
もう今は、好きな遊びは体がほかほかになるおすもうではないらしく
どこかに隠れるから探しに来て!
宣言をしてぎゅっと手を握ったら
ぱーっといなくなってしまう。
という
この時期ならではの誘われ方なので
どうしようかと思ってしまうものの……
必ず見つけてもらえると信じて待っているはずだから
とりあえず何をおいても、
ちょっと探し物が苦手でも
大事なみんなを見つけ出したくてたまらなくて
またドキドキをはじめる
小雨の胸の、春を迎えた日のお話でした。
これからいいお天気が続いたら
ゆっくり眺められる春らしい景色をみんなで探しに
お弁当を持って、桜の名所のほうまで
これまでのことやもっとしてみたいこと
いろんな話をしながら歩きたいと言っても
たぶんそれは今の季節なら、
小雨一人のわがままじゃないんです。