真璃

『脚線美』
まだまだ寒さが厳しいこのごろ。
きれいに晴れた青空が広がっても
薄着で飛び出してしまったら
風が吹いたとたん!
ひええー!
ぎゃあー!
悲鳴が上がるの。
肩や足を出していれば当然よ、って怒られるけど
そろそろいいかなって思ったんだもの。
開放的なファッションになれそうな風の気配を
小さな年長さんでも
いよいよ探しはじめたの!
まあ実際はまだだけど……
思っていたより寒くって
一枚はおって眺める冬が過ぎ行く庭で
こんなに明るい日差しの下だから
そろそろ次の季節のおしゃれの話も早すぎたりなんかしない。
ねっ?
だいいち、寒さがまだ断然厳しかった頃から同じような話をしていたから。
春になる頃には
マリーたちってだいぶ背が伸びてしまうの。
遊びもお食事も冬だからって手加減なんてできないで
すくすく元気にね。
新しい季節が来たら
またひとつ今までにないチャレンジを
おしゃれの分野でも開拓していったら似合うくらい
みるみる育っているはずよ。
その予定よ。
女の子の夢は止められないのよ!
次の季節も一緒に過ごす人の顔が頭に浮かんだら
隣に並ぶときに
今より少し自信を持って
胸を張っていられるように。
まだ小さいからといってがっかりしているヒマなんてない。
思ったほど育たなくたって
立ち止まっていたら、置いていかれるばかりなんだから。
だってフェルゼンはちょっと目を離した隙に
お姉ちゃまたちと面白いことしているみたいだし……
お勉強とか。
部活動の見学とか……
マリーがついていけるお楽しみって
みんなで行くお散歩しかないとしたら
それはちょっと残念だなあー
と思うから。
してみたいことを
がんばらなきゃ!
ちょっとくらい勇み足でやりすぎてしまっても
まあまだ五歳だから
多少の失敗は見逃してくれるでしょう!
うんうん。
それにマリーはかわいいし
そんなにむきになって怒れないと思うわ。
大人の人だって。
よし!
全方位から無茶をしてみたらいいという話になった気がするし
理屈が通ってなかったって
もうすぐ春というだけで充分だと思うし
してみたいな!
すごいこと!
なんかこうどはくりょくな。
今日は星花お姉ちゃまがぽつりともらした
大人になってからの夢を
そんなロマンティックな吐息と一緒のつぶやきだけで終わらせないって
逃げようとするのを追いかけて捕まえて。
あ、つぶやきのことね。
すごく活きがよくてびちびちはねていたのよ。
つぶやき。
マリーの想像の中で
くじらみたいに巨大な姿で飛び上がったんだから。
水面から二メートルくらいは跳ねたわ!
想像で。
こんなに元気な夢なら
フェルゼンの度肝を抜くにも充分でしょう!
今はまだ寒くて足を出せないけれど
春が来たらふとももまでのスリットで
きれいな生足を見せるチャイナドレスを
小学生も
園児の子も
横で聞いていたお天気お姉さんも乗り気で
相談を始めたの。
四月まで待たなくても
過ごしやすくなってきたその場でもう
上着とマフラーと地味な色の厚いスカートをすぱっと脱ぎ
きれいなふともも!
すらーり。
ながいあし。
まだまだ今も空気は冷たく
遠くまで透き通った青い冬空を見上げながら
そんなお話をしました。
この景色に春の花が咲き始めたら
マリーも大輪になって咲かせたくなる。
ちょっとだけおなかとふとももが予想を超えて子供っぽくぷにぷにだからって
今だけのチャンスかもしれない。
ぜんぜんためらう理由にはならないわ!