海晴

『縁起物』
今日は節分。
主に豆まきの日ね!
いろいろいわれがある部分の説明は
詳しい氷柱ちゃん吹雪ちゃんにおまかせで
家に帰ってきて私が引き受けたお仕事はめざし。
願わくば、今日だけは世界で一番魚を焼くのが上手で
しかも世界で一番かわいい職人になりたい。
うん!
なりたいって言うだけなら誰でも自由だもんね!
麗ちゃんにお願いしてネットで上手な焼き方のコツを調べてもらって
なかなかわかりやすい説明がないーって言ったら
もう自分で探して!
逃げられちゃったけど。
後でちらちら、魚焼きグリルの前に立つ私の様子を見ていたのを知っている。
素直になれない子ってなかなか大変ね?
ちょっと怒ってもすねても近づいてくる言い訳が支離滅裂でも
何があってもお姉ちゃんは麗ちゃんのことが好きなんだから
そのことをいつも覚えてくれたらいいだけの話なのにね!
私は麗ちゃんが優しいこと、よく知ってるよ。
ともあれいっぱい協力してもらったおかげでうまく焼けためざし。
世界一じゃなくても
おいしいはずだよ!
恵方巻きも蛍ちゃんが気合充分で作ってくれて
情熱を吹き込むぞ! というには手際よくぱぱっと作ってしまって
普段から家事をやりなれてるってすごい……
職人はここにいたじゃないの!
しかも年下!
すごーい、なでなで。
まるかぶりじゃなくて食べやすく切り分けてもらって
静かになんてできない子ばかりだけど
これからも健康で過ごせますようにの願いは
みんなが心の中にこめていたと思うな。
胃袋の中にも。
思い出にも……かな。
すぐ忘れるかも?
狭いようで広い日本が北から南までまるごと節分。
豆を撒いたり、
撒くのがもったいないって食べたり
めんどうくさいから別にやらなくてもって言い出したり。
霙ちゃんは豆をぶつけるほうになるのは好きみたいだけど
年上なんだから
こういう時は鬼を担当してくれなくちゃ。
それぞれのおうちで、お話を聞くといろいろ違うすごしかた。
豆まきをして節分のおいしさもいただいて
まだまだ寒いのに、春が近づくような気がしてくる
お得なイベント。
地方の違いで文化は少し変わることもあるらしいけれど
本当はどこの家でもぜんぜん形が変わっていくんだろうね。
わがやみたいに鬼が妙に多くて
小さい子たちが勇敢に豆を撒いて追いかける家はなかなかない。
豆をぶつけられて逃げ回る鬼たちもなぜだかはしゃいでる。
厄は出ていくけれど、大事なみんなは鬼のお面を取ったら
よくできたね、豆を撒いたねーってほめてあげるのがその次の楽しみ。
なんだか、春を迎えるのって
こんな気分なんだね。
毎年のことなのに忘れているなんて!
仕方ないから毎年やろうか!
現代にも続いていく日本の伝統。
たぶん形はだんだん変わっているような気がしても
生活の一部に自然に受け入れている、毎年訪れる一日。
みんなが元気でありますように。
福がたくさんやってきますように。
おうちのかわいいみんなのところへ
今年もたくさん訪れるできごとの中に、なにげなく混じっていますように。
豆のお掃除が大変でも
鬼を担当したみんなは不思議といつまでも
話題がずっとなくならないみたいに面白がって片付けているよ。