春風

『あたたかな』
海晴お姉ちゃんもたまのお出かけなんだから
いいのにね?
気をつけて行ってらっしゃいって素直に見送れなかった
ふくれていた子たちも
テレビを見ていても、夜から冷たい雨か雪と聞く機会が多くて
麗ちゃんはお天気のホームページを調べていたみたいで予報の報告に
なぜかわざわざ春風のところにやってきたり落ち着かない様子。
大雪注意報の話題でみんながざわざわしていたから
そのすぐ後、帰ってきた海晴お姉ちゃんはびっくりしたかもしれないですね。
玄関まで大勢でお迎えに出てきたの。
暖房のきいたお部屋からぽんぽんと
日頃は寒くなるとこたつからなかなか動かないような横着な子も
寒い玄関で飛び跳ねて
白い息を吐いている海晴お姉ちゃんの周りをぐるぐる手をつないで回るの。
よっぽどおみやげに期待しているみたいな景色だったかもしれませんね!
おみやげのクッキーも、春風は晩ごはんのあとにしようねって言ったのにな。
確かにはっきり言いました。
でもみんなすごく
うれしいってわかるこんなときだから。
なんだかつい、きついお説教もできなくて
ほほが緩んで
許してしまう。
こういうときにきっちり物事をはっきりさせられるのは
やっぱり私たちの中でも海晴お姉ちゃん。
だから今日はばたばたしてしまっても仕方ないですね。
海晴お姉ちゃんも、まだぜんぜん大人の自覚はないなんて謙遜。
春風はそれよりももっと、まだまだまだの弱くて臆病なよちよち歩きで
どちらかというと妹なんじゃないかって思うときもあるの。
お兄ちゃん!
あら……
これはただ単に王子様に甘えたいだけなのかもしれないです。
どうしても甘えたいときに
ちょっと厳しく注意されてもいいから
それでもひとことだけでも
言葉にしなくても
愛しているってそっと暖かくて大きな手で触れてほしい。
ちゃんと甘えさせてくれないと
ためこんでしまう気持ちが膨らんで破裂してしまうかもしれないから
適度に春風を妹扱い。
いいと思います。
ううん、そんな春風の妹計画は今は置いておくとして。
私たちにはまだやっぱり海晴お姉ちゃんがいないと
幼くてちびっ子でがんばって夢中で背伸びしている
せいぜいめばえたばかりの双葉の葉っぱがいいところ。
無事に帰ってきてくれてよかった!
おかえりなさい!
楽しい遊園地だったみたいでよかったです。
おみやげはもう早くも残っていないけれど
思うことがいっぱいで待っていたみんなには
何か大事に残る気持ちがあるかもしれない。
クッキーがみんなに行き渡ったときに
言おうとしていることがなかなか言えないみたいだった麗ちゃんが
結局、落ち着いて食べなさいってそれだけで
ぷりぷりしているように見えたのも
もしかしたら、開きはじめた新しい芽なのか
ちゃんと立派にこういうときに規則正しいルールに戻してくれる
ガッツのあるお姉ちゃんへと育ちそうな期待。
こんな複雑なお年頃の麗ちゃんを妹に持つ春風は
とても楽しみが多いみたいで、いいことです。
雪は今夜から
明日の昼にかけてが本番になるみたい。
気象庁のホームページを確認しても
時間帯によってはおそるべき降水確率百パーセント。
ひゃくぱーせんと!
一度は言ってみたいのが
愛情百パーセント! ですけど
こんな百パーセントは困りますね。
明日、厚い雲の下を出かけていく朝に備えて着替えを用意しておく夜です。
王子様も寒いときは
暖めてあげたい気持ちマックスの春風のために
甘えじょうずになってほしい。
雪の日の登下校でも、あなたがいつも愛の力で
うれしさ百パーセントでありますように!
それが無茶でも何でも祈るんです。
雪の日でも台風の日でも
あなたのことが好きだから、愛しい気持ちがいつでもあふれている。
止まらないからですよ?