立夏

『サレンダー』
貧乏性に負けた……
いいえ面倒くささに負けた……
誰にだって、敵わない相手はいる。
リッカは天才のサッカー選手になれそうにないし
プロの野球選手もたぶんむり。
いっぽうで
学者になることがありえないとは言い切るにはまだ早い。
ほんのすれすれで冬休みの追試をまぬがれたからといってあきらめない。
ノーベル賞受賞者の人も、
若い頃は体を動かすほうが好きだったと聞く。
日本人ノーベル賞受賞の年、おめでとー!
来年も受賞とかあるかどうかはまあともかくとして
日本人もまあそんなにこだわらないで
もうこまごま細かいことはぜんぶすっとばして
晴れやかなときの世間の気分に便乗して
オニーチャンとリカのいろいろ飛躍の年になりますように!
可能性はいいとして
できることとできないことも
あるよね!
というお話。
きょう、激戦のすえに敗れた相手は
年末のあいつ。
くろまめ?
煮しめ
やつらも強敵だ──
が。
それは本格的な準備は明日からだからまだいいの。
ホタおねーちゃんがタイムスケジュールを組んで
煮出し汁を味付けに利用するとか
また別のほうは半日寝かせて味をつけるとか計画しているから明日。
後回しにできるって気楽でいいネ!
それができないのは
大掃除。
ゴミ出しの最後のまとめ。
とっておいたら役に立ちそうなものいっぱいあるでしょ?
字が書けなくなったボールペンとか
もう使い切ったあとのセロテープの芯とか
真ん中からぽっきり折れてるちっちゃい双眼鏡とか
どう考えても
何かの拍子でまた使えるかもしれないじゃない。
とっておくものと
いらないものをよりわけて
なんだ、全部とっておくものじゃん。
はいしゅうりょう!
これで年末の大仕事は終わったはずなのに。
同じ部屋を使っている三人で
たくさんある小さな部品をきちんと区分して揃えている麗ちゃんと
物が少なくてすっきり片付いている小雨ちゃんと
何か得体の知れない山が二つ三つ崩れそうになっているリカの周辺。
どれも大掃除を済ませてすっきりした後の景色のはずなのに
おかしい、
びみょうにちがう気がするな。
こういうときリカはこだわらないで
まあいいか
あそぼーって、たたみかけの洗濯物の山を跳ねて飛び越え
麗ちゃんのところへダイブするんだけど。
抱きつくうまさには自信があるつもりなのに
コツは逃げられない部屋の隅に追い詰めること!
狙っているのに
つっぱねられるの。
まだ大掃除終わってないでしょ!
ええー……
オニーチャンはどう思う?
本人がきちんと片づけをして
すっきりしたんだから
これでいいはず!
麗ちゃん納得しないの……
なぜ!?
話は平行線。
こういうときは頼れる人に判断をもらおう!
というわけで
オニーチャンはどっちの味方するの!?
美人でしっかりもののよくできた麗ちゃんと
元気だけがとりえのだめなリカと
どちらをえらぶ……
どちらを……
うん……
あれだよね、わざわざ年末になってまで落ち込むことないか!
小さいことは過ぎ去る年に置いていって
よく食べて寝たら
気分も変わるだろう!
明日は泣いても笑っても大晦日
ゴミが出せたか無理だったかは関係なく
全ての人に訪れる一年のしめくくり。
いろいろあった年を
笑って見送ろう!
ありがと!
ちゅっ。
そして新年を迎える準備。
歳神様を角に追い詰めるのはなかなか難しいので
準備することいっぱい
新しい年に向かっていくには体力勝負!
あとあきらめないきもち!
ほかにもいろいろ!
じゃ、隙を見て
ちまちま大掃除を片付けるていで
後ろから麗ちゃんに抱きつくことにしよう!
というわけでお掃除に敗れたお話はこれまで。
引きずってなんかいたらハートに新しい年は来ないよ!
初日の出だけでも輝いて見えるように
あれこれまとめて、
楽しいことも忘れそうなこともたくさんあった年にそっとおいていこう。
ばいちゃ!