『揺るぎなく』
理由なんかなんだっていいでしょう?
その場の気分で。
好きと嫌いと
真ん中に、なんとなくの天秤。
冷たい風も暖房の効いた車内から出たときの一瞬に
きりっと引き締まって気持ちがいいとか。
あんまり強くない冬の光だから
通いなれた景色の木漏れ日がきれいだとか。
大掃除はコツコツ手間を押しまず
地道に進めるのがいちばん早いとわかっていても
歩きたくなってしまったんだから
説明できる理由なんてないのに。
ふと足が学校のほうへ向いただけ。
たぶん、ちょっとは寂しいのかもしれない。
家でふにゃふにゃあったかく
だらだらしているのもどうかなあという気分や
小学生だから長い通学距離では全然なくたって
朝の街並みを揺られながら窓から眺めるのがいつものはじまりだったんだし。
いつもの路線を利用しないで過ごす一日に
ちょっと物足りない気持ちがしたというくらい。
定期券はあるんだし
クラブ活動をしているお友達から誘われてはいたの。
冬休みにどうかって。
中学校でも立夏ちゃんは良く誘われるみたいだけど
すると、どこもクラブ活動は人手不足が深刻なのね。
少子化の影響がまさに当事者の私たちにも感じられるほど?
いちおう都内の学校なのにね。
歴史ある学校ということで、通学路も自然は豊かだし。
駅は少し小さいけれど。
時間によっては改札で渋滞。
後ろのほうでプープーってクラクションを鳴らしている子が……
鳴らしたがる子がいるような。
気のせいか。
せっつかれていると落ち着かないだけで。
もう冬休みなんだから急いで出てこなくたって
あんまり人が多くない朝の路線。
人混みで困ることもない進行方向。
制服で歩く
一人だけの通学路。
クラブ活動の準備をしているお友達と会ったら
あれ!?
なんで!?
ははあ……間違えたな!
もう冬休みだったのです!
なぜかそろって似たような反応ばかり。
そんなにいつも失敗してばかりいるように見える?
信じられない!
でもまあ、誘われて来たとしたら早い時間だったかもしれないわね。
一度だけ、囲碁クラブの活動がはじまる前でひとり仲間を待っている子に
どうしたの、暇なの?
と、なんだか気を使ったように小声で聞かれたけど
まあ失礼ね! とは思ったわよ。
いや、うーん……お手伝いすることはいっぱいあるかな。
学校でもわりと有名な大家族だから。
なにしろ授業参観は三人も四人も来るし。
姉だけで。
しかも、きょうだいは妹のほうが多いという。
上に九人。
下が十人。
すれすれのところで私は比較的お姉ちゃんね。
うん、だからお休みだからってあてもなく歩いているわけにもいかないのにね。
でも理由を聞かれても答えられないから
ほんとに何も考えず歩いていたと思う。
長期休暇で自分がだらけてしまいそうなのが少し嫌だったとか──
たぶんそんな感じ。
せっかくだからついでに足を伸ばして
学校近くのスーパーでチラシをもらってきたから
また何か買い出しの用事があったら
通いなれたいつもの路線で
学校の前まで来るの。
おせちの材料って
なんだかこまごましてて
本当にこれ全部並べるの?
って、スーパーにあるおせちのコーナーを見ているだけで気が遠くなりそう。
ふだんは作らないお料理なのに
世の奥様方は材料をそろえたからってきれいにおせちらしく飾れるものなの?
そもそも普通に何を並べるのかも
指折り数えだしたら途中でわけがわからなくなるくらいだし。
おうちでは奥様らしいのは春風姉さまと蛍姉さま。
ときどきうっかりしているから大丈夫かしら……
こんな話をもし聞かれたら、やっぱり失礼だなって怒られるかな?
クリスマスが過ぎたと思ったら、景色はもうすっかり年末ムード。
この様子ではたぶんお正月が終わるまであっという間ね。
冬休みだからといってだらけているわけにはいかない。
一年の終わりをすっきり胸を張って迎えられるように
面倒でも大掃除と
宿題を早めに。
するべきことは着々と済ませるのが吉。
でしょう?
だから、お正月のおみくじでいい結果が出たときに
ちゃんと計画的だもの、
未来が明るくて当たり前だって
晴れやかに言えるようにならなきゃ。
おうちのどこにもクモの巣なんて残しておかないわ。