『こおりのくに』
うわわっ!
ひ、ひえーっ!
あ。
いまのは、悲鳴と冷え冷えをかけたわけじゃなくて
さむーい!
っていう意味。
でも悲鳴は合ってるかな……
うひゃー、とか、どひゃー、とか
わーお、とか、うぬおー、とか
寒かったら何かこう
叫ばないとやっていられないでしょ!
大人になったら、別に叫ぶ必要もないんだって。
厚着するし。
うわーっ
そういうことになると、ユキちゃんと吹雪ちゃんって
ゆうなよりずっと前から大人だったってことじゃん!
まあそんな気はしてた。
そうだよね!
かなわないよねえ。
とか言ってる一方で
もしかしたら悲鳴でうるさい立夏お姉ちゃんよりも
ゆうなが大人なのではないか!?
なんて思うこともあるよね。
小学校からの短いようでわりと長い帰り道。
長いようでそんなでもない帰り道。
冷たくなった手で立夏お姉ちゃんの太ももを触ると
ぎゃーってうれしそうだから
どれどれ?
ゆうなの手はつめたい?
って、やるよね。
うるさいって
氷柱お姉ちゃんに手をつねられるよね。
つめたいのに!
氷柱お姉ちゃんもつねって初めて
あら冷たい。
だからそう言ってるじゃん!
冷たいってさわったんだから
わかるでしょ!
もうー。
さむーいときの悲鳴が、おうちで一番楽しそうなのが立夏お姉ちゃん。
だから冷たい手の子が集まってくる。
触られてうれしい悲鳴を上げない立夏お姉ちゃんなんて
立夏お姉ちゃんじゃないよね!
何か別の……
立夏お姉ちゃんじゃないちゃんだよね!
なんかへん?
そこはまあいいんだってば。
だから夕凪は、冬でも明るく愉快に過ごすのが得意な立夏お姉ちゃんじゃないから
あんまりさむいと
こたつで丸まって
あーてんごく。
ってなるのがしあわせ。
こたつの上のまるいかごにはみかんが少々。
おことをしょうしょう。
みかんもしょうしょう。
まだシーズンじゃないから、あんまりたくさんはないんだよねー。
しかたないよ。
夕凪はもう子供じゃないからわかるもん。
みかんがなくてもこまらない。
だってそのかわりに
こたつにお茶があります。
あったかーいにほんちゃ。
なんと氷柱お姉ちゃんがいれてくれる!
きゅうすで!
ほら。
寒いんだから。
乾燥してるんだから。
ほら。
手が冷えてるんだから。
お茶。
って。
たまには手も冷えてみるものだ!
ほんと、たまにでいいけどね!
でも、今日は今年一番の寒さだって
別に天気予報じゃ言ってなかったから勝手に決めたけど
今からこんなに寒くなったら
これからもしこたつに熱いお茶がなかったらどうなるんだろう?
氷柱お姉ちゃんがいなくて
ホタお姉ちゃんも、春風お姉ちゃんもいなくて
ひたすら立夏お姉ちゃんが悲鳴をあげているだけのふゆのひととき。
考えるだけで
ひえーっ
そのときはきっと寒くて震えているよ!
もしそんなおそろしいことになってしまったら
星花ちゃんにお願いして
一緒におやつとお茶の時間にしよう!
あったまるからぜったい賛成してくれるって
やさしくてあったかい星花ちゃんのことを夕凪は信じている!
星花ちゃんだーいすき!
もし飲み物もなくて寒かったら抱きついてこたつに引きずり込むから
ばたばたしてかくとうして
あったまろう。
そのときはよろしく!
お兄ちゃんも、冬は日暮れが早いからすぐ帰ってこないと
夕凪がこたつに引きずり込む家族がいなくて途方にくれているかもしれない……
お兄ちゃんはでっかいから、力ずくだときびしいかなあ?
ふたりで一緒に力を合わせて
どうかお兄ちゃんも
夕凪にこたつに運ばれてください!
冷たい手が
そーっと伸びていって
ひぃっ!
さっき、観月ちゃんに首の後ろを触られたのを思い出した!
どこをうろついたらそんなに冷たくなるんだろう?
観月ちゃんもこたつにおいで!
いいからどんどんつめてつめて!
お外がだんだん暗くなったら
こたつにどこかもぐりこむところを見つけてね。
まちぼうけしてる夕凪のとなりにすきまが用意してあると思うよ!