星花

『けいどろ』
お兄ちゃん!
男の子は、好きな子にいじわるするものなのですか?
いじわるっていうのは──
わるいこと!
男女混合で集まった放課後、
チームを分けて鬼ごっこするときも
逃げ足おそい子
つかまえるぞ!
背後から追いかけて
どこに逃げても追いかけて
たーっち!
そしたら、アウトになっちゃう。
逃げてもかなわないぞ、という
遊びの前の挑発。
それがいじわる。
そんなことしなくてもいいのに!
気の弱い子はちょっとびっくりしてしまうのです!
わたし……
足が遅いもの……
って、なってしまうのです。
はじまる前からそんなだといけないよね?
がんばれば意外と逃げ切れるかもしれないのに。
逃げ切れないかもしれないけど
そこがたのしい遊びなので。
だから星花は
ごっこなんだし。
受けて立つんだから!
いくらでもかかってこい!
返り討ちにしてやる!
という感じの気分で
ま、
ままま
まけないよ!
ってなるの。
男の子ってらんぼう!
夕凪ちゃんに相談したら
女の子チームに好きな子がいるんじゃないの?
はっぴーだよぉ!
らっきーだよぉ!
思わぬはねむーん!
話を聞きたがるの。
うーん、だけどどうかな……
好きなときって
好きって言わないとわからない気がします。
おでんの好きな具も
伝えないと、よそってもらったお皿に乗っていないときがある気がします!
星花のお皿にたまご。
夕凪ちゃんのお皿にじゃがいも。
あれ、逆だ?
晩ごはんの席がとなり同士だったので間違えられちゃったこともあります!
そんな時は交換会。
あ、でも好きな人の交換会はむずかしいかな。
たまごが星花のところに走ってきて
好きです!
とか。
三顧の礼でやってきたら
星花は──
それでも星花は
好きなのは
じゃがいもなんです!
やっぱり星花もちゃんと言わなきゃですね。
でもなぜ、男の子はいじわるをして
ちゃんと好きって言わないものなんだろう?
氷柱お姉ちゃんに相談したら
いじわるをして星花ちゃんを困らせる男の子なんて
こっちのほうからつかまえて
反省するまでこらしめなくちゃ!
なんだか過激なことになってしまうの。
ろくでもない男の子の相手をすることはない、
たとえ将来、私が大きな病院のお医者さんで大忙しでも
星花ちゃんに意地悪する許せないやつがいたら
パトカーのサイレンを鳴らして駆けつけるわ。
心強いような……
いえ、やっぱり心強いでいいんですよね!
たぶん……そうですよね?
だからやっぱり
男の子も好きな子には
恥ずかしくても心を込めて好きと言うのが
相手がいることだから、決してうまくいくとは限らなくても
報われなくても
いつでもそれがはじまりですよね!
星花はなんとなく
そんなふうだったらいいな、と思ったの。
だけど氷柱お姉ちゃんは
そんな軽薄な男は
なんだか許せないわ!
とのこと。
大人になると、男の子との付き合いはますます複雑になるみたいで
星花の考え事は
まだまだわかりやすいほうなのだろうかという気がしてきます。
氷柱お姉ちゃんね……
つまらない男にならないように
これから下僕の教育をちゃんとしておかなきゃ!
星花ちゃんにも手伝ってもらって
せいぜい下僕を真人間にしようね!
えーと
お兄ちゃん、どうなっちゃうんだろう?
星花は今のままのお兄ちゃんが好きです。
三顧の礼でお迎えするにしては
星花は領土も何もないけれど
するとこちらから
お迎えしてください! ってお願いに行くほうかな?
星花に見どころがあると思ってもらえるなら
いつでもお兄ちゃんの天下統一の果てしない道に連れ出してください!
どこまでもついていって決して後悔のない旅立ち。
きっとお兄ちゃんは何にもいじわるなんてしないって星花は思います。