『休日の前夜』
明日に控えたハッピーハロウィン。
でもわがやでは
台所組が新メニューを試すささやかなお祭り。
ちょっぴり仮装。
もし蛍ちゃんが何か仕掛けているということがなければ……
だったらお姉ちゃんには見抜けるから。
たぶん平穏なお休みの日。
ゆっくりまったり過ごす時間が待っている。
読みかけの本を開いてみる?
いいお天気だからどこかに足を伸ばそうか?
みんなの知らないおしゃれなお店で
ちょっと珍しいお土産を買ってくるのは
晩ごはんをがんばってくれそうな子たちに悪いかな?
でもまあ、おやつにひとつまみなら?
っていう想像をいろいろしてみるのも楽しいものだから。
金曜日の夜には膨らむ夢。
ああ、この夢が今夜のうちに楽しみつくしてしまって
想像が甘すぎるあまりに
夢を食べる伝説のバクに食べられるみたいに消えたりしなければいいな。
ぐっすり眠って
いつのまにか忘れて
うっかり気がついたら
ぼさぼさ頭で見ているお昼のテレビ番組。
うーっ
たいへん!
ちいさいころに憧れていた大人の女の過ごし方ではないわ!
前日からすっかり計画を考えておかなきゃ!
ともあれ、優雅で落ち着いた夜を迎えるのも大人のたしなみ。
みんなで手分けして洗い物を片付け
ミルクだけのコーヒーでほっとしたら
順番にお風呂に入った子から
髪を梳いてあげる。
きれいになる力を分けてあげたいんだよ。
いい子で温まっていらっしゃい!
お天気お姉さんの指先には
ひそかなお天気の魔法がかかっていて
女の子の髪に月の光みたいなきらめきを与える。
嘘だと思ったら
どうしてお姉ちゃんたちがよく当たる予報を使えるか考えてみて!
お天気と友達になり
いつのまにか相手のことをよく知って
長い時間を重ねた二人みたいに
元気を出すときの秘訣も
あめもようの日の過ごし方も
一緒にいるとわかるようになるんだから。
こっちには天気図という大人の技術もあるのだし
どうして寒さが山の木々を美しく染めるのかも
晴れ渡った青空のおかげですがすがしい深呼吸ができるかも
複雑な理由は全部知っている。
言葉にして伝えるのはなかなか難しくて
わりとお勉強が必要だったりもすることもある。
好きでやっていると言ったら
ちびすけたちがびっくりするのがお勉強。
だけど難しくてもいつのまにか
今日も新しいことを知って
私たちの住んでいるこの町が
どれだけ大きな星の
風と波の流れを受けて
今日もいい匂いのする風を届けてくれるのか
実感する毎日。
お姉ちゃんがみんなの知らないことを少し多く知っていたとしても
何も不思議じゃないでしょう?
とても信じられないような奇跡を起こして
お疲れ様のがんばった今日のごほうびに少しだけきれいでやさしくしてあげられる技を
触れるだけで譲り渡せるはず。
わけもなくあげたいこのもどかしい気持ちを
私はたぶん愛情と呼んだり
おせっかいと呼んだり
麗ちゃんが逃げようとする余計なお世話と呼んだりします。
のんびりした雰囲気を作って
受け入れるだけの隙を……いや余裕を作ってあげればなんとかなる。
さてさて
女の子らしさを磨いたお姉ちゃんが
愛しいキミにあげられるものといったら
やっぱり高校生くらいなら髪型も気になるところ?
扱いなれていない弟のまるい頭……
触れるだけでこっちがドキドキしてしまったらどうしよう。
手元がすべって痛くしてしまったらごめんね。
こういう時って
みんなの散髪が得意なヒカルちゃんなら
キミの髪もやってもらっているの?
うらやましくなるときもある……
もしかしたらヒカルちゃんが無理やりに引っ張り出して
有無を言わせずチョキチョキしてしまう
あのいつものペースにキミも巻き込まれていたとしたら
ああ、うらやましい!
好きな人の手を引いてふたりきりの舞踏会に誘う感じ!
ちょっと違う?
よし!
慣れていくためにも
海晴お姉ちゃんも昔はなかなかの腕前だったハサミさばきを久々に振るうお庭に
強引に誘ってあげるか
それよりまずは一緒のお風呂で髪を洗ってあげることからはじめるべき?
じゃあ二人がお互いをさらによく知るための最初の一歩はどちらがいいか
キミに選ばせてあげよう。
今夜からはじめる?
楽しい明日に備える?
大丈夫、ゆっくり考えていても穏やかな夜は逃げない。
いくらでもある時間を
二人きりで話して決める明日の予定。
どうもこれは理想の休日前の過ごし方って感じ!
手をつないで一緒に大人の階段を昇っていこうね。
いつのまにかお互いを何でも知る仲になれば
キミのしたいことを何でもしてあげられる
大切で楽しい時間を過ごすパートナーになっていく。
……といいね?
お勉強とたゆまぬ努力のお楽しみが欠かせないから
今日もレッスンのはじまりです!