ヒカル

『もしかして』
青空が男の子っぽく育っているのは
原因はたぶん
たぶん……
いや、でもそんなことないよな?
そういえば小さい頃から蛍がおままごとをするとき
私がお兄ちゃん役になって
春風がぷくぷくふくれていたということもあるにはあった。
確かにあった。
よくあったよ。
だけどたいてい
蛍の思ったとおりのお兄ちゃんじゃなくて
ほーらやっぱり!
って春風が。
ヒカルちゃんは私の王子様だもんねー。
ねーって。
顔を近づけられても
その方向で続けるおままごとも
あまり自信がないなって迷って。
実際に男の子に生まれていたらなあ。
こういうときだけは
あんまり期待に応えられないって困らずにすむのにな。
だんだんそんなことも忘れて
すっかり小さい子の遊びもしなくなり
男の子に混じって遊んでいるとか
運動部のクラブ活動もはじめるとか
元気が有り余っていそうな妹がいたらキャッチボールに連れ出したりとか
そんなことをしているうちに
気がついたら今。
世の中──
女の子らしい遊びばっかりじゃないんだ!
って
家族たちに教えたり楽しくやりながら
毎日を過ごしてきたような──
やっぱり私のせい?
青空のプロレス好きは。
いや、でも
何も教えられなくたって青空たちは元気だし
私が遊んであげられるとなると
やっぱり一番楽しいことをしたいなって
いつも思うだろう?
立夏だったらかわいいキラキラを教えてあげられるし
マリーがもっと大きくなったら
みんなに女王様のなり方を教えてあげるんだろう。
それに私だって
別にいつもいつも荒っぽい遊びばっかりしているわけじゃなくて
大磯のほうに里帰りしたママにおねだりして
その時は確か乗馬クラブの体験乗馬に連れて行ってもらったあとで
もっと乗りたい
おうまに乗りたい!
って。
まだ小さいし
あぶないからだめよ、
とか。
ちゃんと荒っぽいことはしないで
おしとやかにしてきたときもある……
馬から落ちたら
いくら頑丈でも怪我をするもんな。
本当は繊細で優しい生き物たちなんだって。
やっぱり私たちにそんなに怪我をして欲しくないに決まっているよな。
もし私が
打たれても殴ってもそうそうへっこまない
観月が仲のいいお友達だっていう赤いお顔の酒呑童子みたいだったらいいんだけど
ちっともそうじゃないんだし。
すぐ転んですりむくから。
だからあんまり乱暴じゃないほうがいいなって
ときどき気をつけてるよ?
すぐ忘れるけど。
だから私が
青空がかわいく育つためによくない影響を与えているなんて
そんなことを考え出したら
どう責任を取っていいかわからない……
わからないから
考えても仕方ないな!
これは!
な!
まあ、あんまり危ないことはしないように
体を使うときはどういう点で気をつけたらいいか
ちゃんと教えてあげるつもり。
できることはそれくらい。
ストレッチとか。
準備運動は大切だぞ、
と……
それだけ。
いいのかどうかわからないけれど
私にできることで
思いつくのはそれがすべて。
本当に全部だ……
大事なことを教えるんだから
よくできたらほめてあげなきゃ。
私の教え方が下手で
また何かよくわからない方向に進んでしまったら
その時は、またその時になってからだな。