『プロレス』
楽しいことは
小さい子たちのいっぱいのエネルギーで
あわてたりどきどきしたり
小雨には手におえない
どうしようもないって
泣きながら頭を抱えてしまう毎日。
楽しい……?
小雨があたふたしていても
ちっとも振り向きもしないでばったんばったんほこりをたてるの。
もしかしたらこれは
泣いてしまっても
やっぱり学校が終わったら
なるべく早く学校から帰ってきて
よく小学生組としては一番になるのは
楽しいことでいいのだろうか?
明日も泣きながらになるかもしれないけれど
小さい子のお世話を任せてもらえる約束。
すぐに小雨ではどうにもならないとあきらめて
お兄ちゃんやお姉ちゃんたちに頼ってしまうでしょうか……
たまには
みっともないって顔を隠しつつ
ちょっと涙をこぼしながら一人でできるし
そうでなかったら
ちびちゃんたちに赤い目をしているのを見つけられてしまって
その後、わりと気を使われるお姉ちゃんとなるのか
それとも、お兄ちゃんやお姉ちゃんたちが助けに来てくれるのか?
同じ部屋で本の貸し借りやお勉強の約束をしている麗ちゃんが
どうして戻ってこないの!
と、様子を見にきてくれて
そのまま助けてもらえることもあるから
年上に限った話ではなく
麗ちゃんはしっかりした子だなあ
と感心して
それに比べて小雨はやっぱり
どうも……
言っても仕方ないし
そんなことでじめじめしてしまうのもつらいけど
いまひとつ
しゃっきりしたいい感じに
ならないな……
たまにできるかな?
でも、期待して大丈夫というほどではないみたい?
ごくまれに
うまくいく。
青空ちゃんは体を動かすのがとってもすきなの。
誰かが歌っていたら
なんにもためらわないで
その場で考えたらしい新しい踊りを見せてくれます。
かわいい青空ちゃん。
いい子ねってほめてあげようとしても
小雨の手をすり抜けていつもどこかへ行ってしまう。
ちょっと離れた遠くでまたうきうきしているんです。
あんまりにぎやかじゃない小雨のことが苦手なのでしょうか?
それで逃げちゃう?
でも、小雨が近くにいて落ち着けるお兄ちゃんのところにも
青空ちゃんははしっていって
とびはねているの。
だっこしてもらえるまで
お兄ちゃんが別の方向を見ていても
なんにもかまわないで
全力でぴょんぴょん止まらないんです。
すごい……
ガッツです。
家族で一番かもしれないですね?
まだたった一歳のおちびちゃんがいちばん体力全開。
もはや誰もついていけないなんて。
すさまじいことです。
世の中は小雨の知らないことがいっぱい。
まさかまさか
こんな体の小さな子にパワーが満載されているとは。
だからもちろん
ちょっと暇をもてあましたら
体の大きなお姉さんたちに飛びついて
こっちが油断したらすぐ
投げ飛ばそうと組み付いているんです!
もちろん一度も誰も投げ飛ばしたことはないですけど。
たぶんないですよ。
小雨の知らないところで
夕凪ちゃんくらいなら投げられてしまっているのではと考えたら
青空ちゃんのことだからあってもおかしくはない……
だけど、やっぱりないかな?
そこで青空ちゃんは
小雨にもおどりかかって
プロレスがすき!
なげとばす!
と宣言するんです。
うう……
もう小雨の身長はあんまり伸びなくなったから
あと2、3年かな?
どうにかこらえていられるのは。
さくらちゃんも、にじちゃんも
おもしろがって小雨の手をとってぶんぶんします。
プロレスーっていうの。
そういうのもプロレス?
たまに自分で小雨を振り回した勢いで
勝手に転んだりしてしまうからあまり油断はできないかも……
みんなかわいくて
小雨が泣いていたらすぐ気がついてしまう優しい子ばっかりなのに
なぜ男の子みたいな激しい遊びが好きなの?
聞いても
わかんなーいって
本人たちはなんにも知らないみたいだから
小雨は一人で考えなくちゃ……
おままごともすきで
お花のお世話も
疲れて帰ってきた海晴お姉ちゃんが肩をたたいてーって言ったら
海晴お姉ちゃんの肩をとりあいっこして困らせてしまうくらいなのに
よくおおあばれするのは
なぜだろう?
本当はお兄ちゃんが一番大好きで
男の子のお兄ちゃんにも楽しく遊んでほしいから……
ということはあるのかな?
とっても無邪気だから
そこまで難しくて大人っぽい考えはないみたい?
だってそうしたら
小雨がチビちゃんたちのことが好きなのは
困ってしまってどうにもならなくて
どうにかしなくちゃってがんばっていたら
もしかしたら、ちょうど通りがかったお兄ちゃんが見逃せなくて助けてくれるかも?
そんな計算があるみたいな話になってしまうことに
ついさっき気がついてしまったので
ええーっ!?
たぶん小雨はそこまで考えて
子供たちのお世話係を買って出たわけではないので
お兄ちゃんは別にどうしても助けないといけないわけでもなくて……
でも小雨が困っていたら
それはもう
お兄ちゃんに申し訳ない!
と思っていても
でも
やっぱり助けてくれるとうれしいです……
とてもうれしいんです……
だから小雨が
もうちょっと一人でどうにかできるようなときが増えてきて
たまに助けてもらうくらいだったらいいかな──
だけど一人でなんて考えても
今の時点でぜんぜん先の見通しが立っていないので
まだずっと先が長い気がするな──
ともあれ
小雨は明日もがんばります。
たまには見ていてくれますか?
お兄ちゃんが忙しかったら無理にとは言わないので……