海晴

『曇り空の歩きかた』
こたつ会議の最終決定は、今回は結局のところ投票ではなく
今回の議長を立候補で担当してくれて
また我が家の家事を細腕で立派に取り仕切っている蛍ちゃんにお任せしようという
話し合いの結果が出ました。
そのあと
夜の天気予報で月曜日はあまり気温が上がらないと聞いたので
そういうことならと
ついについに
私たちの家にも、深まる秋を感じさせるどどーんと大きな
こたつの登場がありそうな感じになりました。
一応、蛍ちゃんから相談されて
私が早朝の天気予報に出演した後に
その様子で決定を任されてはいたのだけれど。
じゃあ番組が終わったら電話するね、
電話ができなかったらGOサインということで
放課後は、年長組でこたつ布団を選ぶ買い物に集合ね!
ゆうべのうちに落ち合う場所を決めた流れではありました。
だから朝は天気予報の最中に
ああー今日は思っていたより気温が下がるかなーと知ったもので
番組中のお知らせで
そう、帰ったら
今日から私たちの家もこたつの出番なのです!
と思いっきり宣言してしまったから
おうちのほうでは
どひゃー
この番組で決定の報告なの!?
大騒動になったと聞きました。
いつもの日常の一部になっているテレビのコーナーだけど
まだまだ劇的な効果があるみたいね。
重大なことをさらりと、
というわけで
どうも氷柱ちゃんの考えによれば
このお姉ちゃんに番組を任せていては
そのうち大事な結婚報告なんかも自分たちが何も知らないまま
天気予報の途中でいきなり教えられるのではないか
なんて文句を言われたけど
またまたあ。
そう言われたら
ねえ。
みんながそれをお望みだったら私はかまわないけど
どうする?
氷柱ちゃんが期待しているみたいだけど
こういうことは相手にも相談しなくちゃいけないと思って。
きのうまではなかった左手の薬指の
きらりと輝くお給料三か月分を見せて
私たち
結婚しました!
となるのは
やっぱりキミが卒業するまで待ってからかな!
あともう少しのあいだ、氷柱ちゃんの驚く顔はおあずけだね。
そういうわけで今日のお楽しみはデパートでのお買い物。
私たちの狙うターゲットはただひとつ。
そう、こたつ布団。
あたたかいやつがいいのか
まだ時期的にはそこまでもふもふでなくてもいいのか
実際に見てから検討しようという相談。
どっしり幅を取るインテリアであることも考えると
ある程度はデザインも重視したくなりそう。
特に麗ちゃんのリクエストでは
落ち着いて大人っぽい青い色がうれしいらしい話だったけれど
暖房器具だからね……
色合いは悩むところね……
とりあえず参考にします!
みんなで見て回るだけで楽しい家具選び。
赤にだいだいに黒にピンクにミルク色に
チェックにペイズリーに水玉におひさま柄に
ひまわりコスモス薔薇もすみれもスズラン畑も経由して
今年最初ということで気分もうきうき冒険したいところだけど
冷静になってみればそんなに何度もこたつ布団を変えるようなものでもないし
最終的には無難なところで
色合い豊かなリボンの柄。
これを見つけたのは……
ヒカルちゃん。
意外と目利きなのね?
自分ではあんまり気がついていないみたいなのに。
最後まで候補に残った次点はキャンディー。
立夏ちゃんが選んだだけあってポップできらめいて元気が出そうだったけど
こたつにはどうなのか?
さまざまな回り道を経て
意外と落ち着くところに落ち着くものらしい
こたつ。
ちょっと冷たい風に厚着が必要なんて忘れるほど熱中して
ヒートアップしすぎて汗ばむくらいで
これは帰り道にあんまり寒かったらラーメン屋に寄り道だな、
なんて考えていた夕方の街並みは
デパートから出た後、すっかり日が暮れた通りに灯る明かりの中に家へと急ぐ人通り。
なんだか待っている人たちがいるおうちが恋しくなりそう。
そして我が家で唯一の頼りになる男手として
やや重いかさばる荷物の運搬おつかれさまでした!
たまにみんなで交替しつつだったし
今夜は海晴お姉さんのマッサージ屋さんが千客万来になりそうね。
立夏ちゃんが大荷物を自分で持って運ぶのがうれしくて跳ねていると
まだサンタクロースの季節には早いんじゃないだろうか?
それとも、もう楽しいイベントたちが待っていられなくて
向こうからぞくぞく押し寄せてくる時期になったのだろうか。
と考えてみたりもする帰り道でした。
吹雪ちゃんが丁寧に掃除を済ませていたこたつ。
えらいなあ
吹雪ちゃん、えらい!
それを支えて手伝った小雨ちゃんたちもみんなえらい!
長かった道のりを経て
こたつにオレンジの火は灯り
私たち家族は、ぽかぽか暖かい光を囲みながら和んでいるのでした。
やさしいあたたかさ……
今年もこたつに心を奪われてしまう子が何人現れるのだろう?
長女はみんなを取り返すのが先か
自分が堕落してしまうほうが早いのだろうか。
これからどんどん私たちの町は寒くなるけれど
新たに灯る輝きも増えていくはずの季節。
うっかりこたつと一心同体で日々を過ごすばかりじゃなくて
思い切って飛び出していけたら!
そんな言葉があまり説得力を持たない
猫みたいに丸くなる今の私です。