『ステップバイステップ』
はんはん
はんばーぐ♪
にくにく
おにく♪
あっ!
お兄ちゃん、見ていたの?
いつから?
どのあたりからだろう……
蛍がひとりでキッチンにいて
宮廷料理人ごっこをしていたところからかなあ……
ちがうの!
別にそんなにいつも
人に見られたら仰天されるようなことばかりしているわけではないと
思うよ?
小さい子に影響されてついつい耳に残っている
同じ歌をいつのまにか口ずさんでいるのは
誰でも
よくあること!
あんなにりりしいヒカルちゃんもたまにはしてしまう。
あ、でも、氷柱ちゃんはしないけど……
そう、おいしい歌を作ったのはにじちゃんだったの。
お買い物のお肉を発見して
踊りながらキッチンまでついて来ちゃって
おいしいごはんを
よろしくおねがいしまーす!
とリクエストするものだから
しかたのないお姫様だな!
こうなったらホタもできるだけ
腕を振るいます!
ってなる気持ち
わかるでしょう……?
わかりにくいかな……
ところで、さっきの歌ではハンバーグをお願いされたような気がするんだけど
買ってきたお肉は豚ばら肉で
焼きそばを作る予定だったのが……
どうしよう?
ひき肉じゃないので。
まあ、おいしいものなら……
なんとか?
なるかも。
と、今のところは期待してがんばることにしましょう。
それにしても小さい子はいつでも
なんでもいいことを発見して
たちまち歌まで作ってしまう
生まれながらの芸術家なのではないかと
たまに思います。
即興であんなふうにはしゃいだ気持ちを表現するのは
蛍にはできないことだし。
さくらちゃんがいっしょうけんめい画用紙に向かって
パステルピンクのスモックにまで赤や青がうつってしまうほど夢中になって
完成したらお兄ちゃんのところに持っていくから
ホタお姉ちゃんはそれまで見ちゃだめ!
なんて悲しいことを言うのも
ちっちゃい子らしいよくわからないエネルギーのなせるわざ。
もう見せてもらった?
ハロウィンパーティにしたいことの希望だと思います。
それとも、しっちゃかめっちゃかだったせいでそんなふうらしかっただけ?
さらに夕凪ちゃんが
朝には珍しく春風ちゃんと蛍のあとに一番に起きてきて
風がすごかったー!
と、なんと自分からニュース番組をつけて
おそろしいー!
やっぱりお天気予報のお勉強は大事なんだな、
とか
まじめにつぶやいているの!
いつからあんなに学者さんらしい顔をするようになったのでしょう?
昨日の立夏ちゃんのおしゃれレッスンで
歌ったり踊ったり女子力を磨いて
お勉強は楽しいものなんだな!
ためになるー!
なんて柄にもないことを……珍しいことを……
いやいやその、感心なことを言い出したらしいと聞いていなかったら
これは夕凪ちゃんは熱がある!?
蛍はきっと勘違いしたはず。
そして夕凪ちゃんがふくれてしまっていたはず。
あぶなかった……
夕凪ちゃんはそのくらいのことはおおらかにすぐ忘れてくれそうな気もするけど
あんまり無意味にぷりぷりするのもつまらないはずだものね。
蛍は優しいお姉ちゃんでいられたらいいなと願っています。
次々に芸術の秋や学問の秋に
先陣を切って目覚めていくのは、こんな小さい子たちの活躍からなの。
海晴お姉ちゃんが、
そろそろみんなに芸術の秋らしいぬりえの本を見つけてこなければ!
と張り切ったり
霙お姉ちゃんが、涼しくなってきた季節に
お茶の時間を豊かにしてくれる和菓子のお話をたくさん聞かせてくれるのも
そろそろ食欲の秋だと気づきはじめた子供たちの
小さな秋の発見や
鳴り出すおなかの音、
そしてまとわりついてのしつこいおねだりがはじまったからこそ、
そんなふうに考えることも
できるかもしれません?
いつでも新しいことや楽しいことを追求してやまない
抱っこしたら重みを感じながらどうにか持ち上げられるくらいの小さな子たちが
私たちがいつも探しているパワフルなヒーローの本当の姿なのだと
そう考えるときも
たまにね。
あるんです。
だって、こんなに走り回って見つけたすてきなものを
いつも一緒にいるというだけで、全力で分けてくれようとするんだよ。
蛍だってたぶん、まだまだ若いのだから負けてなんかいない、
同じくらいうれしいことがいっぱいのヒーローになって
この気持ちを誰かに分けてあげられるんだ……そんな気持ちになったって
仕方のないことですよね?
歌も踊りも
まだちっちゃなみんなが知らない蛍だけの秘密だって
どんどん惜しげもなく見せ付けて
おどろかせてしまおう!
なんてはしゃいでいたら
お兄ちゃんに見られてしまうときも……
たまにはあります!
あんまり気にしないでくださいね。
そのへんはすぐに忘れて
後で蛍がちゃんと見せたい、かっこいいところだけを覚えていてほしいです。